2019.01.01 08:00

【新年に 世界】対立と分断の向こうへ

 2019年が明けた。
 ことしは4月末に天皇陛下が退位され、5月1日に皇太子さまが新天皇に即位される。「平成」の元号も変わるが、これを機に新時代が到来するというものではあるまい。
 天皇の代替わりや改元は日本特有の事情だ。それによって不規則に時代を区分すれば、歴史の大きな流れを見誤る恐れもあるかもしれない。ただし改元の年は、私たちが「来し方行く末」について考える一つのきっかけになるだろう。
 昭和天皇の病状が悪化していた1988(昭和63)年12月。ソ連のゴルバチョフ共産党書記長=当時=が国連総会で「世界を変える演説」を行った。2年以内にソ連軍の約10%に当たる50万人の兵力を、一方的に削減すると発表したのだ。
 前年の米ソによる中距離核戦力(INF)廃棄条約の調印に続く、通常兵力の大幅削減だった。
 「戦争と対決、宗教的な対立、自然に対する攻撃、飢えと貧困の脅威、それに政治テロの時代に終止符を打つ…これはわれわれ共通の目標であり、共に行動することによってのみ、その目標を達成することができる」
 兵力削減にはソ連経済の悪化という背景もあった。それでも自国だけでなく世界全体への責任を果たそうというゴルバチョフ氏の演説が、緊張緩和の流れを加速させたのは間違いない。89(平成元)年にベルリンの壁が崩壊し、冷戦は終結した。
 30年前、東西分断を克服したかに見えた世界。今はどうだろう。
 宗教や民族対立などによる紛争は絶えない。自然破壊は進み、飢えや貧困もなくならず、テロは拡散している。「米国第一」を掲げるトランプ大統領は昨年、ロシアの違反を理由にINF条約から離脱する方針を表明した。
 トランプ氏に限らない。移民排斥などを訴える、自国第一主義のリーダーは増え始めている。敵意と憎悪があおられれば、不寛容が渦巻く社会になってしまう。英国の欧州連合(EU)離脱の動きはことしも続く。世界は再び対立と分断の構図に陥りかけているように映る。
 不寛容に対して不寛容な態度で臨めば、対立は一層激化し取り返しのつかない結末を迎える。私たちはそのことを、二つの世界大戦を通して学んだはずである。
 どれほど意見が異なる相手でも憎悪を燃え立たせるのではなく、冷静に説得する努力を続けなければならない。兵力の一方的削減のように、時には譲歩しなければならないこともあるだろう。分断と対立を乗り越えるのに、それは欠かせない姿勢である。
 ことしこそ、世界を融和と協調の流れに向かわせたい。それには2国間、多国間の協議を積み重ねるしかない。
 「共に行動することによってのみ、その目標を達成できる」。ゴルバチョフ氏が述べた真理は、今も変わっていない。
カテゴリー: 社説

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