2016.05.25 08:15

高知県で復刊「ふるさとの台所」が人気 梅原真さんが制作秘話

「ふるさとの台所」を制作したメンバーと、30年ぶりの再会を喜ぶ梅原真さん(高知市上町2丁目の城西館)
「ふるさとの台所」を制作したメンバーと、30年ぶりの再会を喜ぶ梅原真さん(高知市上町2丁目の城西館)
 およそ30年ぶりに復刊された「土佐の味 ふるさとの台所」の売れ行きが好調だ。高知県内旧53市町村の料理250食を紹介した本で、絶版後も愛読され続けていた。2016年4月、モノクロだった料理写真をカラー化した新装版が刊行された。初版4千部で既に2千部が売れている。どうして30年も前の本が今も魅力を失わないのだろう。 

 原書の刊行は1987年。県内各地に当時あった高知県生活改善協会の女性と県職員の生活改良普及員が3年がかりで全市町村の郷土料理を調査、その成果をまとめたのが「ふるさとの台所」だった。

 つがに飯(西土佐村)、かしきり豆腐(安芸市)など、地域ならではの旬の食材の食べ方を季節ごとに紹介した。単なるレシピ集ではなく、地元の人の食材に対する思い入れを交えながら、市町村の食文化をリアルに伝えた。

 この本の取材、構成、装丁を担当したのが香美市のデザイナー、梅原真さん(66)だった。

 このほど高知市内のホテルで開かれた出版祝賀会に当時のメンバーである元生活改善専門技術員の西綺(つや)子さん(84)、横田嘉代さん(85)、藤田慶子さん(79)らが出席。本の誕生秘話を梅原さんとともに壇上で語った。

 西さんと横田さんが大きな風呂敷包みを持ち、梅原さんの事務所を訪ねたのは1986年。各市町村の郷土料理を女性たちに聞き取った大部の資料で本にできないかとの相談だった。

 当時、梅原さんは知る人ぞ知る存在のデザイナーだった。「大きな事務所じゃなくて、なぜか僕に来た」と苦笑い。どうして梅原さんに依頼したかについて、2人は「記憶にない」とあっさり。西さんが「ま、私は向こう見ずの方ですから…」と話すと、会場から笑いが起きた。西さんは「梅原さんは破れたジーパン姿でしたけど、魅力的でした」と振り返った。

 梅原さんは普及員のお膳立てで、53市町村で料理を作ってもらい、レシピを聞き、写真に収め、食べ、話を聞いた。

 地域の人たちにはカメラマンと間違えられて、「写真屋さん、もうかまんき、お茶にしいや」と誘われた。その時に聞いた地元の人たちの食の話が抜群に面白かったという。それが「土佐の味 ふるさとの台所」に収録されて人気の「お茶にせんかね」というコラムになった。

 初版の料理写真はほとんどがモノクロだった。藤田さんが「当時は、全部カラーやったらおいしそうなのにと思ったら、(復刊で)それが実現した。本当にうれしい」と語ると、会場から拍手が起きた。

 梅原さんは「高知のフィールドを全部歩き、250食を完食したのは僕の自慢です」。自らの原点の一つになった仕事をしみじみと振り返っていた。

 「土佐の味 ふるさとの台所」の復刊を手掛けた「復刻を熱望する会」の畠中智子代表は「ふるさとの味が消えゆく今こそ必要で、30年たっても色あせない本。若い世代に伝えるためのツールにしていきたい」と話している。

カテゴリー: 主要文化・芸能


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