2016.05.24 08:20

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(8)手探りの発達支援

立位訓練をする音十愛ちゃん。(上)は横への移動、(下)は装具を付けて足裏に体重をかける練習(1歳11カ月、高知大学医学部付属病院リハビリテーション部提供)
立位訓練をする音十愛ちゃん。(上)は横への移動、(下)は装具を付けて足裏に体重をかける練習(1歳11カ月、高知大学医学部付属病院リハビリテーション部提供)
 視覚障害児の中で全盲で生まれてくる子は少ない。盲学校に通う子供は弱視か全盲だが、山崎音十愛ちゃん(11)のような重度の重複障害児になるとその多くは、肢体不自由か知的障害の特別支援学校へ入るという。それゆえ音十愛ちゃんの発達支援の参考になりそうな研究、文献はあまりないようだ。

 「これほど重度の子供さんは初めてだったので、かなり難しかったですね」と振り返るのは高知大学医学部付属病院の理学療法士、細田里南(りな)さん(40)。高知大学医学部付属病院の小児科を退院した翌月、2006年4月からリハビリを始めたが、見えないし、両足に障害がある。「『触りたい』『動きたい』という興味をどう育てていけばいいのか。ガラガラの音も苦手だったし、母が触ることすら快感でなかったみたいで、悩みましたねえ。これなら喜んでもらえるかなと思ったことでも、うずくまることが多かったです」

 数少ないお気に入りは、体が揺れることと、母、理恵さん(49)の歌う童謡ぐらい。母の「○○が好きみたい」「××に反応した」という情報をヒントに訓練に取り組んだという。

 リハビリとともに大きな壁となったのは、口の周囲の過敏だった。口に物が入ることを嫌がり、ミルクすら拒否した。歯磨きもできない。歯茎が腫れて歯垢(しこう)がたくさん付いていた。

 生後間もなくから音十愛ちゃんの相談に乗った高知市保健所の歯科医師、上田佳奈さんはこう話す。「赤ちゃんはもともと、ほ乳反射でおっぱいを飲むんですが、その反射は一般的には5、6カ月で消えて、一方で過敏が出てくるんです。さらに『咬反射(こうはんしゃ)』が残ることもあるんです」。

 咬反射とは、奥歯に指を入れると反射的にかみしめること。通常は指吸いや、おもちゃをなめたり、いろんな物が口の周りに触れることでその過敏性は取れていくが、障害があると過敏や、咬反射が残り、食べる機能に影響が出ることもあるという。

 「音十愛ちゃんも最初、ほ乳反射で何とか飲めていたんですが」と上田さん。

 一方、歯磨きは上田さんの指導で、理恵さんが過敏の少ない奥歯から取り組んだ。「奥歯1本に1カ月。やっと慣れたら奥から2番目。だんだん内側に寄せたんですが、最後の前歯4本、これは大変でした。2歳か3歳までかかったかなあ」と理恵さん。

 2歳5カ月からは高知県立療育福祉センター(高知市)の言語聴覚士の摂食指導も始まった。

 「最初は口を開けてくれず、上あごはちょっと触るだけでも敏感。長く触ったら大ごとになりそうでしたね。味覚も過敏で、受け入れられる味が少なかった。初めは、とろみのある水を綿棒に付けて口に入れ、慣れるとともに他の味も試したんですが、嫌がりました。バナナプリン味は吐き出した―とカルテに書いてますね」と聴覚士。1年後、ようやくナシのペーストや重湯を口に入れるまでになっている。

 もどかしい日々が続く。そんな2歳の秋、体に再び異変が起きた。髪の毛がどんどん抜けだしたのだ。

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