2018.11.23 08:00

【APEC不調】摩擦解決は対話しかない

 米国と中国の通商対立が、多国間で築いてきた自由貿易の価値観をかき乱している。
 日米中など21カ国・地域が参加し開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が、首脳宣言の採択にこぎ着けられなかった。1993年に首脳会議が発足以来、宣言の見送りは初めてだ。
 貿易摩擦を激化させる米中の二大国の対立が、国際協調を分断した。APECはアジア太平洋の巨大経済圏で貿易の自由化や経済協力を広げ、将来の経済統合を展望する。その構想が足元から揺らぐ。
 昨年発足したトランプ米政権は、保護主義的な通商政策を加速させてきた。特に、多額の貿易赤字を抱える中国への制裁関税などを先鋭化させ、これに中国も報復措置で対抗し、泥沼化してきている。
 その二大国間で過熱する火種がAPECを直撃した。
 米国は、中国が国有企業に巨額の補助金を投入して市場をゆがめ、外国企業から知的財産権を奪っているなどと批判し続けている。首脳会議では、貿易ルールを取り仕切る世界貿易機関(WTO)の抜本改革の要請を宣言に入れるよう提案した。
 これに中国が反対した。トランプ政権を念頭に「自国第一主義」への非難を宣言に加えるよう求め、譲らなかった。米中の妥協を導き出せなかった、APECの機能不全も問われかねない。
 自国の利害を前面に押し付ける米国の強硬姿勢だけでなく、巨大経済圏構想「一帯一路」を進める中国の覇権の影や影響力の拡大も国際協調にきしみを招いている。
 APECの前に日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も、年内の実質妥結を断念した。RCEPを対米戦略に引き込もうとする中国の思惑が透け、関係国を警戒させた可能性が指摘される。
 日本は、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP)や、日欧経済連携協定(EPA)など多国間の自由貿易の枠組みをリードしてきた。だが、米中で深まる対立を解きほぐす役割は果たせなかった。
 日米で来年始まる新たな貿易交渉では、米国が大幅な市場開放を迫ってくる恐れがある。一方の中国は米国との摩擦を背景に、日本との経済協力などに前向きな姿勢を見せ、10月に両首脳が新たな協調路線を確認し合った。日本の貿易戦略は難しいかじ取りを迫られる。
 ただ、米中とも貿易摩擦による国内経済への打撃は大きく、互いに対話を模索しているともみられる。今回のAPEC首脳会議を前に、中国は142項目もの貿易慣行の是正策を米国側に伝えたとされる。
 米国も中国に今月末の20カ国・地域(G20)首脳会合での首脳会談を呼び掛けた。日本は「自由で公正な貿易」の追求を説いていきたい。貿易戦争は制裁や報復合戦ではなく、対話でしか解決できない。
カテゴリー: 社説


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