2018.10.27 08:00

【日中首脳会談】安定した関係築く努力を

 日中平和友好条約の発効から40年の節目を機会として中国を訪問している安倍首相がきのう、北京で習近平国家主席や李克強首相らと会談を行った。
 協力を強化する方針で合意した分野は、第三国でのインフラ開発協力や、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突回避に向けたホットラインの早期開設、朝鮮半島の非核化へ「責任を果たす」ことなど幅広い。
 日中関係は2012年の日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化を境に冷え込んできた。
 日本の首相が中国を公式訪問すること自体が約7年ぶりになる。緊張が続いてきた両国関係は新たな局面を迎えたといえる。
 中国が対日接近に動いてきた背景には、トランプ米政権との貿易戦争の激化があるだろう。対米摩擦の長期化が予想される中、日本との経済協力に活路を見いだすしたたかさがのぞく。
 トランプ政権が掲げる米国第一主義の下で、日本も通商では厳しい立場にある。ただ、日本は安全保障の基軸に日米関係を位置付ける以上、中国との経済協力には重層的な戦略と慎重さも求められよう。
 中国が主導する経済圏構想「一帯一路」には、途上国の債務拡大を招く「新植民地主義」との疑念がくすぶる。スリランカでは借金漬けの末に中国に港湾の運営権を奪われた例もあり、米国も「債務外交」と批判を強める。
 国際社会から一帯一路への肩入れと取られることを懸念する日本政府は、日中間の経済協力を「第三国での協力」との表現にとどめている。実質的にも覇権主義に取り込まれない視点が必要になる。
 安全保障上の懸念も積み残されたままだ。
 安倍首相の訪中で尖閣諸島を巡る対立は事実上、棚上げされる形になる。ただし、中国が尖閣を含む東シナ海と、周辺国と権益を争う南シナ海で海洋進出を活発化させている現状には変わりはない。日本も米国との同盟強化と防衛力整備を急いでいる。
 習指導部には、尖閣諸島や歴史認識問題を巡る対立で譲歩する考えはないという。火種を抱えたままの関係改善ともいえる。
 中国の対日世論は好転の傾向を見せている。日中のシンクタンクなどの世論調査では、日本に「良い」印象を持つ中国人が増え、05年以降初めて4割を超えた。
 一方で、日本人は度重なる尖閣の領海侵犯などが影を落とし、86・3%が中国の印象を「良くない」としている。まずは両国間の不安定要因を取り除く対話が必要ではないか。
 首脳会談で安倍首相は習氏の早期来日を要請した。首相が言う「新たな時代」の関係構築に向けては、少なくとも首脳が相互往来する関係で信頼を醸成する努力は欠かせまい。
 外交の基本は対話である。今回の合意を安定した関係を築く努力の一歩としなければならない。
カテゴリー: 社説


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