2018.09.05 08:00

【就活指針】学生の側に立って考えて

 全てを満たす解を見いだすのは難しいかもしれない。臨機応変に見直すことがベターな場合もあろう。ただ、主役である学生の立場がなおざりにされていないか。
 経団連の中西宏明会長が、就職活動の日程などを定めた経団連の採用指針を廃止すべきだとの考えを示した。個人的な意見とはいえ、財界トップの言及だ。企業の採用活動に影響を及ぼしかねない。
 発言の背景に指摘されるのは、IT(情報技術)関連をはじめ外国企業も含めた人材獲得競争の激化だ。面接や内定の解禁日を定める日本の就活ルールが、人材確保の縛りになっているとの見方だろう。
 2021年卒業生から廃止したい意向のようだ。20年は東京五輪・パラリンピックのため、企業は会社説明会の施設不足を懸念し、指針の見直しを求める声が上がっている。中西氏の廃止論は大企業側の事情を酌む色合いが濃く見て取れる。
 就活ルールは見直しが繰り返されてきた。それを一気に取り払うという表明は唐突で、学生を戸惑わせ、混乱させかねない。
 経団連は16年卒業生の就活で、それまで3年生の12月からだった会社説明会を翌年3月に、面接を4年生の4月から8月にそれぞれ繰り下げた。学業を優先し、就職活動の時期を遅らせるよう求めた安倍首相の要請に経団連が応じた形だった。
 学業と就活の両立を目指す変更だったが、経団連の指針は罰則もない目安にとどまるだけに、企業の「解禁破り」が横行し、就職活動は逆に長期化。先に決まっていた中小企業の内定を辞退し、大企業を選ぶ学生も相次ぎ、学生と企業の双方から不満が噴き出した。
 このため経団連は翌17年卒業生から面接の解禁を6月に早めるルールに再び見直さざるを得なくなった経緯がある。「朝令暮改」のような変更に学生は振り回されてきた。
 人手不足の深刻化で企業の採用意欲が高まる中、優秀な学生を水面下で先行確保する争奪戦も激しくなっている。経団連指針に縛られない外資系企業との競争も強まるほか、新卒や既卒などを問わない中途・通年採用も広がっている。
 民間の調査では、19年卒業予定者の今年5月1日時点の就職内定率は既に4割を超え、前年を上回る。企業の囲い込み傾向は明らかで、就活ルールの形骸化を指摘する声が聞かれる。
 就職・採用活動の自由化を歓迎する企業も多い。だが、大企業が過度に有利になり、中小企業や地方企業との格差を広げかねない。売り手側の学生も「早い者勝ち」が過熱すれば、学業をはじめ学生生活を窮屈にしたり、企業探しや職業選択の機会を狭めたりもしかねない。
 企業活動が多様化し、国際化する中、就職・採用の在り方も改善を迫られるのは当然の流れだ。人こそ企業の将来を担う財産、との精神に立てば、学生の側の事情を優先的に考えた手だてこそが急がれよう。
カテゴリー: 社説


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