2018.09.04 08:00

【防衛費の膨張】脅威の強調は妥当なのか

 装備増強ありきではないのか、疑問がわく。東アジアを巡る安全保障や外交の局面、装備の費用対効果を分析した妥当性が冷静に問われなければならない。
 防衛省は2019年度予算編成に向けた概算要求で、過去最大となる5兆2986億円を求めた。18年度当初予算と比べ2・1%増となる。
 18年度当初予算で2千億円を超えた米軍再編関連経費などは金額を示さない「事項要求」とした。これらを除くと18年度当初比で7・2%という大幅な伸びになる。防衛費は第2次安倍政権が発足してから7年連続の増加となる見通しだ。
 要求では、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得関連費2352億円をはじめ、海空領域の能力強化に重点配分した。敵の射程圏外から反撃できる長距離巡航ミサイルなども盛り込まれた。
 巨額装備を導入する理由としては東アジアの危機が強調されている。
 年末の新防衛大綱や今後5年間の中期防衛力整備計画の策定をにらんで、防衛力強化を既定路線とする思惑が透ける。
 18年版の防衛白書は、北朝鮮の核・ミサイルを巡って「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」とし、17年版より表現を強めている。
 6月の米朝首脳会談で北朝鮮が非核化の意思を示した点は、白書も「意義は大きい」と評価した。停滞しているとはいえ米朝の対話局面が続く中、ことさら危機を強調する姿勢には矛盾も帯び始めている。
 中国に関しても、白書は「日本を含む地域・国際社会の安全保障上の強い懸念」と明記した。
 しかし、米国との通商摩擦なども絡み日中関係は改善の流れにある。今年5月には不測の衝突を回避する「海空連絡メカニズム」の運用開始に合意している。
 北朝鮮にせよ中国にせよ、「先の読みにくい国」であることは確かだろう。その上で、こうした脅威の強調は今の外交局面で妥当なのか。国会でも議論が必要だろう。
 「巨額」の中身も議論が要る。
 弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備は04年度から始まった。18年度までの整備費は累計2兆円を超えている。イージス・アショアの取得費も導入決定時より膨れ上がった。今後、BMDにどれだけの予算を投入するつもりなのか。
 米政府の提示額を受け入れる対外有償軍事援助(FMS)、いわば「言い値」での調達も過去最大の6900億円余りとなる。背景には、米国製武器の購入圧力をかけるトランプ米大統領の影がちらつく。本当に必要な装備の精査や価格低減の努力は喫緊の課題になる。
 社会保障費が膨らみ、来秋には消費税増税という国民負担増が視野に入る中で、防衛費だけが聖域化することは許されない。
 防衛費増強に頼る安全保障政策にはおのずと限界もあろう。冷静な情勢把握に基づく外交努力が先になければ、国民の理解は得られまい。
カテゴリー: 社説


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