2018.09.02 08:00

【辺野古撤回】不信の溝こそ埋めたい

 沖縄県が米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回した。先月死去した翁長雄志知事の遺志を継いで決定したかたちだ。
 工事が継続できなくなった政府は訴訟などの準備に入る。辺野古移設を巡る国と沖縄県の対立は再び法廷の場に向かいそうだ。
 国と自治体が法廷闘争を繰り返す事態は異常である。対話が進まないまま工事は進み、辺野古移設は既成事実化しつつある。
 翁長氏の死去に伴う県知事選(今月30日投開票)は容認派と反対派の激しい争いが予想される。安倍政権は容認派を全面支援する構えだ。
 このままでは、どんな選挙結果や司法判断が出ようが、混乱や不信が一層深まりかねない。地方自治にも禍根を残すことになる。改めて対話を求めたい。
 それにはまず安倍政権が強硬姿勢を改めることだ。移設計画の再検証も欠かせまい。不信の溝こそ埋める必要がある。
 辺野古移設を巡る法廷闘争は、2013年に当時の仲井真弘多知事が決定した埋め立て承認を翁長氏が15年に取り消したことに始まる。
 複雑な訴訟合戦に発展し、いったんは和解が成立したものの意見は折り合わず、再び訴訟になった。16年に最高裁判決は取り消し処分は違法と判断し、決着した。
 この時、菅官房長官は「県と協力し移設を進める」と語っていたが、関係は築かれないまま現在に至っている。それどころか、国が司法判断を武器に工事を加速させようとする姿が目立つ。
 埋め立て承認は決して工事の「白紙委任」ではない。希少生物の保全を図り、工事の具体的な進め方を県と協議する条件になっている。
 最高裁判決後に工事が始まった後も、県はこれに違反しているとして国に工事の停止を再三求めたが、話し合いは進まなかった。
 県は今回の撤回に当たり、希少サンゴを移植せずに工事に着手したと指摘。護岸の一部が軟弱地盤で、移設予定の海底には活断層が存在し、地震で被害が発生する恐れがあるとの専門家の指摘も挙げた。
 承認撤回は辺野古移設を阻止する「最後の切り札」と言われてきた。県が周到に準備してきた面があるとはいえ、県の主張が事実であれば、工事の再開は許されまい。
 沖縄には国内の米軍専用施設の約7割が集中する。普天間飛行場の辺野古移設は基地の沖縄への新たな固定化につながる。
 安倍政権は、移設は市街地にある普天間飛行場の危険を除去するためと強調するが、移設先がなぜ直線距離で40キロも離れていない辺野古なのか、十分な説明はできてない。国の姿勢は最初から疑問だ。
 安倍首相は「沖縄に寄り添う」と語ってきた。基地負担軽減へ「確実に結果を出す」とも誓ってきた。それは沖縄の人々が納得のいくかたちで進めるべきものだ。

カテゴリー: 社説


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