2018.08.31 08:00

【県立大の蔵書】県民の「なぜ」に答えよ

 舞台は尾﨑県政がうたう「知の拠点」である。判断を下したのは、本にこだわりがあるべき研究者の組織だ。なぜこんなことが起きるのか。解せないことはいまだに多い。
 高知県立大学が、永国寺キャンパスの図書館が昨春新設される際、約3万8千冊の図書や雑誌を焼却していた問題が波紋を広げている。高知新聞報道への反響も大きい。
 新しい図書館は、旧館の蔵書全てを収蔵する能力がなかった。それを理由に焼却された蔵書の中には、戦前戦中の本、古書店でも入手が難しい絶版本、価値が高い辞典や図鑑類なども多く含まれていた。県立大には1冊しかない図書も6659冊が燃やされた。
 狭い館内に置けないのならば、処分自体はやむを得ない面もあっただろう。ただ、県立大の蔵書は県費で購入された県民の財産である。
 図書館の司書らは処分候補リストを作成、全教員に打診し、引き取りを促すなど入念に作業してはいる。しかし、そこから外れた本を県内の別の図書館に譲渡し、学生や県民に引き取りを求めて、再び活用する発想がなかったのは残念だ。
 焼却という結論に至るまでに、深い議論が行われた形跡が見えない点も気になる。
 一部の教職員は焼却への疑問が少なからずあり、学生や県民への提供を求める意見を述べている。しかし提案は結局受け流され、継続的な議論にはならなかったという。
 大学の図書館を束ねる責任者が繰り返す「(学生に)ただであげちゃうの?」「大学のはんこを押した本が外部に出回るのはよろしくない」という説明には、困惑するばかりである。
 県は、高知市のオーテピア高知図書館が開館する直前に、県図書館振興計画をまとめている。
 計画策定時のデータでは、県内では公立図書館が10町村でないほか、蔵書数、書籍購入費に充てる資料費で全国平均を上回ったのは高知市などわずかだった。
 住民に図書サービスを十分に提供できていない市町村からは「くれたら良かったのに」という率直な声も出ている。県内の図書行政にちぐはぐさを感じざるを得ない。
 尾﨑県政が設立した県公立大学法人で、同じ法人下にある高知工科大との距離感にも驚く。
 県立大側は、法人は同じでも大学は別々として工科大に本を持って行く発想がなく、相談もしなかった。一方の工科大側は焼却処分に「あり得ない」と絶句している。
 県公立大学法人の理事長は、図書館行政にも深く関わってきた県の元教育長だ。調整し、改善する余地はあるだろう。
 なぜ、こんなことになるのか。県民は疑問が解消できていないに違いない。県立大は問題発覚の直後、公式サイトに学長名でおわびのコメントを発表したのみである。
 県立大は早急に背景を検証し、県民の疑問に答えるべきだ。
カテゴリー: 社説


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