2018.08.30 08:00

【日米地位協定】知事会の改定提言は重い

 全国知事会が、沖縄県など米軍基地を抱える自治体の負担を軽減するため、日米地位協定の抜本的見直しを求める提言を初めてまとめ、政府に提出した。
 在日米軍に特権的な地位を与え、さまざまな問題を招いている協定について、全国知事会として見直しを求めた意味は大きい。政府は重く受け止める必要がある。
 日米地位協定は、1952年に旧安保条約と同時に発効した日米行政協定が前身だ。60年の安保条約改定に合わせて地位協定に改めたが、以来一度も改定されていない。
 協定によって、日本の国内法は米軍に適用されず、日本側による基地内への立ち入り権、訓練や演習に関する規制権限もない。犯罪を起こした米軍人らの裁判についても米側に優先権がある。
 その結果として、基地周辺の住民は航空機の騒音、米軍人らによる事件や事故、環境問題などによって安全・安心を脅かされている。基地が集中する沖縄県の現状をみれば明らかだ。
 米軍ヘリの墜落、女性暴行殺人事件など重大な問題が起きると、協定の改定を求める世論は高まった。だが、日米両政府は極めて消極的で、補足協定の締結などによる運用の改善にとどまっている。
 基地問題を巡っては、米軍基地や関連施設を抱える15都道府県でつくる「渉外知事会」が地位協定の改定などを求めてきた。基地の有無にかかわらず、全都道府県で共有しようと働き掛けたのは沖縄県だ。
 先日亡くなった同県の翁長雄志知事は「基地問題は一都道府県の問題ではなく、日本の民主主義と地方自治が問われている」と提起。全国知事会として研究会を設けて議論を重ね、今回の提言に至った。
 背景にあるのは輸送機オスプレイの配備の拡大や、日米合意による本土側での訓練の増大だ。米軍機の訓練ルートが通り、過去に墜落事故も起きた高知県は危険性などを経験している。
 基地はなくても、事故や騒音などの恐れは強まり、住民の暮らしが脅かされかねない。日米安保体制の重要性は認めるにせよ、事実上の「治外法権」を放置しておくわけにはいかないとの意思表示といえる。
 提言は、地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令など国内法の適用、事件・事故時の立ち入りなどを明記するほか、訓練ルートや時期の事前情報の提供、事件・事故の防止策などを求めている。
 日本と同じように米軍基地のあるドイツやイタリアでは、米軍の事故に対する世論を踏まえて地位協定が改定された。訓練などに国内法が適用され、基地への立ち入り権なども保障されている。
 在日米軍に特権的な法的地位を与えているため、日米地位協定は「憲法より上にある」とも指摘される。全国知事会の総意である提言を重く受け止め、政府は抜本的な見直しに向けて一歩を踏み出すべきだ。
カテゴリー: 社説


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