2018.08.29 08:00

【障害者雇用不正】「理解不足」は通用しない

 障害者を軽視したずさんな実態にあきれる。あきれるばかりではなく、障害のある当事者や民間企業は怒りが大きいに違いない。
 中央省庁が雇用する障害者の数を水増ししていた問題で、政府が調査結果を公表した。
 昨年6月時点の雇用を発表していた約6900人のうち、不正に算入していた人数は半数を超える3460人に上った。2・49%としていた障害者雇用率も、実際は1・19%と法定雇用率(当時2・3%)を大幅に下回った。
 水増ししていたのは国の行政機関の8割に上る。障害者雇用率制度を所管する厚生労働省から法務省、会計検査院などにも広がり、問題の根深さをうかがわせる。
 障害者団体の役員は「国は多くの障害者の雇用の機会を奪い、人生を左右してしまった可能性がある」と言う。憤りは当然である。
 長年にわたって水増しが行われてきた背景には、政府内には不正はないという認識でチェック機能を設けなかった身内への甘さがある。
 各省庁は毎年6月の雇用者数を厚労省に報告する義務はある。だが、報告内容の真偽を確認する仕組みがないというずさんさだった。
 厚労省のガイドラインでは、制度の対象者は障害者手帳での確認が原則で、指定医の診断書や意見書で確認できる場合もある。ところが、指定医以外の無効な診断書が使われたり、健康診断で異常が見つかった職員を障害者と見なしたりしたケースが既に分かっている。
 各省庁は、「意図的な不正ではない。法令解釈の誤りが原因」という釈明を繰り返している。発覚が広がった高知県など地方自治体でも「水増しの意図は全くなかった」と同じような説明が行われている。
 しかし、法制度の趣旨に基づき、率先して範を示すべき公務職場である。制度の理解不足という言い訳は通用するものではあるまい。
 国は制度の理念について、事業主向けの資料で「障害者がごく普通に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる共生社会の実現」を掲げている。民間企業には納付金や企業名公表という罰則もちらつかせ、雇用を促してきた。
 民間企業の法定雇用率は今年4月から2・2%に拡充された。各企業にとってもよい人材を確保し、適材適所に配置するための努力や工夫が求められている。
 高知県内の中小企業も、単独では希望者が集まらず、ハローワークの合同面接会で数十人を面接して雇用している。それでも雇用者の勤務時間が不足する場合などは、1人不足するごとに月5万円の罰金を厳しく科せられてきたという。
 失墜した「旗振り役」の信用を取り戻すのは容易ではない。
 国は民間に示してきた理念を自らに突き付け、原点に戻るしかあるまい。水増しの経緯や実態を徹底して検証し、チェック機能の強化と真の雇用率達成を急ぐべきだ。
カテゴリー: 社説


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