2018.08.28 08:00

【自民党総裁選】国民に開かれた論戦を

 安倍首相が9月の自民党総裁選への出馬を正式に表明した。既に名乗りを上げている石破茂元幹事長との一騎打ちになる。
 同党総裁選の選挙戦は、安倍氏が再登板した2012年以来6年ぶりになる。安倍氏は連続3選が懸かる。前回15年は無投票だった。総裁任期の今後3年間の政権運営に直結するだけに、党内にとどまらず、国民に開かれた論戦を求める。
 論戦テーマは多岐にわたるが、党内主要派閥の支持を取り付けた安倍氏の国会議員票の優勢が強まっている。争点の議論を狭めるようなことにならないか、気掛かりだ。
 安倍氏は長期政権の実績を誇示する。その中でも強調するのが、デフレ脱却を目指す経済政策「アベノミクス」だ。「異次元の金融緩和」などで企業の業績は上向き、株価も大きく上がった。有効求人倍率も改善し、1倍を大きく超える高水準に達している。内閣支持率を支える要因にもなっている。
 「1億総活躍」といった成長戦略も次々と打ち出してきた。だが、少子高齢化や人口減少といった構造的な問題への抜本策にはまだなり得ていない。アベノミクス効果をうたうのとは裏腹に、消費税増税を2回にわたり反故(ほご)にし、財政健全化も先送りしてきた。
 憲法改正でも安倍氏は強気の姿勢だ。秋の臨時国会へ党改憲案提出を目指す意向を示し、持論でもある9条への自衛隊明記などの議論を急がせようとしている。石破氏も9条改正では意見が対立するものの、改憲議論には熱心だ。
 だが、国民の実感や政策の優先順位は違う。共同通信の世論調査でも景気や雇用、年金などの社会保障、子育て・少子高齢化への対策を求める声が多数で、改憲の要請は低い。財政への不安も目立つ。
 森友、加計学園問題の疑惑も解明には程遠く、安倍氏の説明も尽くされていない。安全保障関連法の制定なども含め、国民の不安や疑念を数の力で押しのける強権的な政治姿勢が際立つ。国民の不信の根深さは世論調査でも明らかだ。
 安倍氏の総裁選出馬の正式表明が石破氏より遅れたのは、そうした政権運営の公正性を問う石破氏との議論を避けるためだったのではないかとの見方もあるほどだ。石破氏も主張を明確にし、両氏は正面から議論を戦わすべきだ。
 総裁選はこれまで300票だった党員・党友の地方票を国会議員票と同数の405票に増やした。12年総裁選の地方票で石破氏に大差で敗れた安倍氏が今回、鹿児島県で出馬表明したのは地方重視のアピールを狙ったとみられる。
 だが、地方の厳しさは増すばかりだ。過疎化、東京一極集中にも歯止めがかからない。高知県人口も1940年の約70万人と同レベルに減り、さらに70万人を割りかねない。見栄えだけの看板は要らない。地方に立ちはだかる障壁を払い、活力を導く具体的な政策議論を切望する。
カテゴリー: 社説


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