2018.08.27 08:00

【線状降水帯】一日も早く予測を可能に

 西日本豪雨の一因になった「線状降水帯」の発生条件を解明する研究を国が始める。文部科学省が2019年度予算の概算要求に関連経費を盛り込む。
 線状降水帯は、次々と発生する発達した積乱雲が列になり、長時間にわたって同じ場所を通過、停滞して作り出される強い降水域を言う。長さ50~300キロ、幅20~50キロ程度の「線状」が形成される。
 進路や規模が予想できる台風と比べ、狭い地域で、短時間で発生するため仕組みがよく分かっておらず、予測が難しい現象である。
 国土交通省の有識者会議も30年を目指して、気象衛星やレーダーの高度化を図り、半日ほど前に予報する技術を開発するよう提言している。
 近年、全国各地で多くの人命が奪われる甚大な被害が相次いでいる。国は一日も早く精度の高い予測を実現すべきである。
 線状降水帯は、気象の変動を背景に最近使われることが増えた気象用語だ。本紙の記事には12年の九州北部豪雨で初めて使われている。
 とはいえ、集中豪雨の際にしばしば現れる線状の降水域は、以前から指摘されていた。
 気象庁気象研究所は、1995年から2009年までを調査。台風による直接的な大雨を除く集中豪雨261事例のうち、約3分の2で発生を確認している。
 積乱雲の寿命は通常1時間とされる。しかし、前線付近で冷たい空気の上に暖かい空気が乗り上げた場合などには強い上昇気流が生じ、寿命を迎えた積乱雲の近くで別の積乱雲が次々に生じるという。
 停滞した梅雨前線に大量の水蒸気が流れ込んだ西日本豪雨では7月5日からの4日間に、東海から九州にかけて線状降水帯が15個も観測されたことが明らかになった。
 鬼怒川の堤防が決壊した15年の関東・東北豪雨でも、少なくとも10個の線状降水帯が形成されている。14年の広島土砂災害や昨年の九州北部豪雨でも猛威を振るい、いずれも多くの住民が犠牲になった。
 国は発生の仕組みが分かれば、土砂崩れや洪水の予測モデルと組み合わせ、大規模な豪雨災害の発生シナリオを作成する。地方自治体や企業にも提供し、避難計画づくりに役立ててもらう想定という。
 まずは、線状降水帯ができやすい気象や地形の解明が急がれる。
 一方で、今から可能な対応として情報伝達の精度をいかに高めていくかも考えなければなるまい。
 西日本豪雨では、行政が作成したハザードマップや、市区町村長が発令する避難勧告や避難指示などの情報が、現実の住民の避難行動に結び付かなかったことが報告された。行政が情報を持ち、発信しても、緊迫感を持って地域住民に伝わらなければ意味を失う。
 水害への対応を宿命付けられてきた高知県でも、改善に生かすべき重い教訓である。災害シーズンはまだまだ続く。
カテゴリー: 社説


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