2018.08.26 08:00

【子どもの命】多様に生きられる場所を

 子どもたちが長い夏休みを過ごす8月も終わりが近づき、2学期が始まる。思いを新たに新学期に臨む児童や生徒ばかりではない。気持ちがふさぎ、行き場が見えなくなっている子どもたちがいることに目を向けなければならない。
 夏休み明け前後に、自ら命を絶つ子どもが急増する傾向が明らかになっている。政府の自殺総合対策推進センターの分析では、子どもの自殺者数は年間を通し9月1日が突出して多く、8月下旬がピークになるという。
 進学や就職など進路の選択が迫られる世代にとって、長い休暇の終わりが「大きなプレッシャーや精神的動揺」を生じやすくさせているという。引きこもりや不登校の子どもたちにはなお一層の重苦しさになるのだろう。
 君たちがどうにもつらくて、どうしても気持ちと体が学校に向かわないなら、行かなくてもいい。進学より、就職より、何より優先して選ばなければならないのは「生きる」という進路だ。今は暗いトンネルの中でも、その先に必ずたどり着ける出口がある。
 学校や社会、地域、私たち大人は、その「生きる」ことの意味や未来を子どもたちに示し、伝え切れていない。むしろ、社会や大人たちの側にこそある閉塞(へいそく)感や疲弊が、子どもたちを押しつぶしているのではないか。
 内閣府が2015年版自殺対策白書で、過去約40年間の分析から、18歳以下の自殺者数が9月1日に突出して多いというデータを公表。春休みや5月の連休が明けた後も多く、今年公表した新たな分析では、夏休み後半から自殺が急増する傾向が改めて浮かんだ。小学生では11月30日の自殺者数が最も多いというデータも明らかになった。
 子どもの自殺がなぜ特定の時期に急激に増えるのか。兆候はなかったか。最悪の選択を踏みとどまらせる機会を見落としたのではないか。データを裏付ける実態を詳細に調べ、自殺を防ぐ手だてを探り出さなければならない。
 「9月1日」データの衝撃をきっかけにした、子どもたちをいじめや自殺から守る民間組織の活動も広がっている。電話や無料通信アプリLINE(ライン)による相談窓口や触れ合う場を設け、「命を守って」と寄り添う。
 小さな胸に抱え込んだ苦悩の要因や深さはそれぞれ違う。心のありようもさまざまだ。行き場を失い、迷う子どもたちに差し伸べる救いの手は多いほどいい。行政の支援、地域との連携も広げたい。
 不登校の児童らを長年支援してきたNPO法人の代表は、夏休み明けにかけての子どもの自殺急増を「一度レールを外れてしまうと生きにくい日本社会の縮図」と説く。学校ではなくても、別の道で努力すれば必ず未来が開ける―。そんな個性と多様性が尊重される「居場所」を子どもたちは渇望している。
カテゴリー: 社説


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