2018.08.19 08:00

【トルコショック】不安定要因除く冷静さを

 トルコの通貨リラが急落し、世界の金融市場が動揺している。
 対米関係の悪化から、リラは外国為替市場で一時、最安値を更新。新興国の通貨下落も引き起こした。
 リラ下落は一服したが、スペインやイタリアなど欧州の大手金融機関が抱えるトルコ向け債権が焦げ付けば、欧州経済に悪影響を及ぼす恐れもある。世界経済の圧迫要因になるのは避けなければならない。
 事態悪化の底流には、強権支配を加速させるエルドアン大統領の経済政策に対する懸念がある。
 トルコ経済は物価上昇が問題になっている。本来は利上げを進めてインフレ抑制に乗り出すべき局面だが、エルドアン氏は「貧しい者をさらに貧しくする」と猛反対。トルコ中央銀行は利上げを見送っている。
 欧州の首脳からトルコ中銀の独立性を求める批判が出ているのは、当然だろう。通貨防衛策は早急に実施されるべきだ。
 直接の引き金を引いたのは、トルコ在住の米国人牧師の拘束を巡る米国との制裁の応酬である。
 米国は今月、人権侵害を主導したとしてトルコ2閣僚の資産凍結などの経済制裁を発動した。さらにトランプ米大統領は、鉄鋼などの関税を2倍に引き上げると発表した。
 トルコ政府も、米国からの車やアルコール類などに追加関税を課す報復措置を発表。対米強硬路線を強めている。
 トランプ氏が制裁に踏み切った背景には、やはり11月の中間選挙がある。拘束された牧師は、米国最大の宗教勢力で、トランプ氏の支持基盤であるキリスト教福音派に属する。このため解放実現に向けた姿勢を示す必要があったようだ。
 同盟関係を顧みないトランプ流は、欧州連合(EU)などとの貿易摩擦でも実証済みだ。今回は自国民の保護という大義名分があるにせよ、選挙対策がもたらす国際的混乱の多様さに懸念が募る。
 一方、トルコ側は、牧師は2016年のクーデター未遂の黒幕と断定した在米イスラム指導者らと関係があると主張している。反政権派の弾圧を強硬に進めてきたエルドアン政権が譲歩する見通しはなく、解決の糸口は見えていない。
 トルコとの対立を激化させるトランプ政権の姿勢には、外交上の「愚策」とする指摘もある。
 もともと北大西洋条約機構(NATO)に加盟する両国だが、過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討で、米軍がクルド人勢力と共闘したため関係がこじれた。
 エルドアン氏はこれを機にロシアやイランと接近。NATOと対立するロシアからは地対空ミサイルの購入を進めている。地政学上も重要なトルコの動向は、不安定な中東の緊張をさらに高めかねない。
 米国、トルコともに冷静で、熟慮した上での対処を求めたい。EUも両国との関係悪化を抱えるが、経済を含めた不安定要因を取り除くための対話は絶やしてはなるまい。
カテゴリー: 社説


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