2018.08.17 08:00

【カンボジア選挙】強権で和平は築けない

 7月に実施されたカンボジアの下院選の結果が発表され、フン・セン首相が率いる与党カンボジア人民党が125の全議席を独占し、完勝した。フン・セン氏による強権体制の継続が確定した。
 人民党は今年2月の上院選でも改選の全議席を獲得しており、一党独裁的な政権運営が強まろう。だが、フン・セン政権が選挙を前に最大野党を弾圧、排除した上での選挙結果だ。正当性は到底認められない。
 内戦を経て、日本を含む国際社会が関わってきたカンボジアの民主化プロセスは大きく後退した。強権政治で和平は築けない。
 フン・セン氏は30年以上にわたり首相に在任する。その長期政権への国内批判の高まりから、前回の2013年下院選などで野党カンボジア救国党が躍進、議席を伸ばし、人民党に迫った。以来、政権は野党への警戒を強めてきた。
 昨年9月に救国党党首が国家反逆容疑で逮捕されたのをはじめ、政権は露骨に野党を締め付け、ついには最高裁に訴え、救国党を解党に追い込んだ。1強与党と多弱の小政党の戦いになった今回下院選は当初から与党圧勝が予想された。
 与党は投票率を上げて選挙の正当性をアピールするため、メディアや市民にも圧力をかけた。確定投票率は約70%だった前回を上回り、80%を超えたものの、無効票が前回の1%台から8%超に大幅に増加。政権批判の民意が白票などで表れたのは間違いない。
 欧米もフン・セン政権の弾圧に抗議し、米国と欧州連合(EU)は今回の選挙支援を取りやめた。米国は選挙結果に対し「欠陥のある選挙」「民意を代表していない」と厳しく非難し、EUも制裁的な措置を検討している。
 民主主義を損なう不公平な選挙が容認されるはずもない。一党独裁への懸念も強まる。だが、フン・セン政権は国際社会の批判を聞き入れようとしない。その強硬姿勢に透けるのが、カンボジア支援で存在感を増す中国の後ろ盾だ。
 世界に影響力を広げる中国はカンボジアに対しても2010年から日本に代わって最大の援助国になっている。巨額の中国マネーで経済関係を密接にし、南シナ海への海洋進出問題でもカンボジアは中国寄りに傾いている。
 日本は1992年、初めて国連平和維持活動(PKO)に参加して以来、カンボジアの和平や復興に尽力してきた。今回下院選では選挙監視要員の派遣は見送ったが、実務支援の専門家派遣などは続けた。欧米の厳しい対応とは距離を置き、選挙への懸念表明も控えめだ。
 カンボジアとの友好継続への腐心に加え、中国への傾斜から引き留めたい思惑もにじむ。だが、中途半端な対応は日本の国際的な信用にも関わりかねない。長い和平支援で築いてきた信頼関係の土台に立ち、フン・セン政権に民主主義の普遍的価値を説く機会を探るべきだ。
カテゴリー: 社説


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