2018.08.16 08:00

【保育無償化】現状では混乱しかねない

 政府が来年10月に実施予定の幼児教育・保育無償化に多くの自治体が不安を抱いていることが、共同通信の調査で分かった。
 都道府県庁所在地や政令指定都市など全国81の主要都市のうち、無償化に「賛成」と回答したのは44%の36自治体にとどまった。
 調査では、8割近い自治体が無償化によって入所希望者が増えると予想。それによって、認可保育所などに入れない待機児童が増えるとみる自治体も6割に上った。
 保育士の確保など別の使い道に財源を充てるべきだ、と注文を付ける回答も35%あった。
 無償化より先にするべきことがあるのではないか―。調査結果には、そんな不満がにじみ出ている。
 当然であろう。安倍政権が昨秋の衆院選前に打ち出した保育や教育の無償化は、国民受けはするが論議や準備があまりに不十分だ。
 安倍首相は2013年4月、保育定員を増やして5年で「待機児童ゼロ」とする目標を掲げた。しかし、企業の採用増などで子どもを預けて働きたい人が増え、昨年、5年での達成を事実上断念した。
 厚生労働省によると、昨年10月1日時点の待機児童数は全国で5万5400人を超える。特に都市部は深刻で、保育施設の増設や保育士の増員を求める声が強い。
 にもかかわらず安倍首相は新たな看板政策として無償化を掲げた。自治体が困惑するのも無理はない。
 内容にも疑問が多い。
 無償化は消費税率の10%への引き上げに合わせて実施する。消費税増税はもともと、増収分の一部を社会保障分野の充実に配分し、大半を借金返済に充てて財政再建を図るのが狙いだった。
 安倍政権は消費税率10%への引き上げを2度延期した上、方針転換を図って、保育無償化の費用などは借金返済分の一部から回すという。その結果、将来世代の借金負担を減らす財政再建も先送りされる。
 3~5歳児の無償化は保護者の所得制限を設けない。現行でも低所得者の保育料は減免されているため、大きな恩恵を受けるのは保育料の高い高所得者層になる。
 認可外保育は月3万7千円までの補助にとどまったことも、公平性の点から疑問が拭えない。認可保育に待機児童が多く、やむなく認可外に子どもを預ける保護者が多い。
 そもそも無償化すれば、保育需要が一層高まり、待機児童の増加や保育士不足に拍車がかかることは容易に想像できるはずだ。今年5月に制度設計ができたばかりなのに、来年10月スタートという準備期間の短さも気になる。
 子育て世代の負担を軽減する政策自体には異論はあるまい。むしろ歓迎されるべきだろうが、このままでは自治体や現場が混乱しかねない。保育の質の低下を招いては、あまりに代償の大きい「ただ」になる。
 政府は懸念を重く受け止め、混乱回避に万全を期すべきだ。
カテゴリー: 社説


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