2018.08.15 08:00

【終戦の日】平和と「今」を考えたい

 時代が移ってゆく。平成最後となる73年目の終戦の日を迎えた。
 即位時からは初めて、憲法が定める国と国民統合の「象徴」となった天皇陛下は、象徴のあるべき姿を模索され続けてきたといえる。
 高知新聞が連載した「憲法のいま 公布70年」では、側近が「象徴とは国民が願うものを体現することだ」と述べている。
 平成に確立された「象徴の務め」の柱は、東日本大震災をはじめとする被災地の訪問であり、国内外で重ねられた戦争犠牲者の慰霊であっただろう。
 天皇の名の下に先の大戦は行われた。「負の遺産」と向き合う慰霊の旅は1994年、硫黄島に始まる。戦後50年の翌95年には広島、長崎、沖縄、東京都慰霊堂へ。戦後60年からは太平洋の激戦地にも赴き、全ての戦争犠牲者を悼んだ。
 戦没者追悼式では、平和を願うメッセージに戦後70年の2015年から「深い反省」という文言が加わった。歴代首相が触れてきたアジア諸国への加害責任に言及しない安倍首相との違いが際立つ。
 今年1月、自民党の重鎮だった野中広務氏が死去した。
 小渕内閣の官房長官に就いて以来、沖縄振興策に積極的に関わった。基地政策には批判も残るが、00年の沖縄サミット開催に際して「戦争世代を生きた者の贖罪(しょくざい)」と述べるなど、沖縄に寄り添う姿勢には定評があった。
 安倍首相が目指す憲法9条改正に野中氏は生前、「再び戦争になるような歴史を歩むべきではない。反対だ」と言い切っている。戦争を知る者の信念と生きざまだろう。
 現実の政治はこうした祈りや警鐘と別の時空を進んでいるかに映る。
 戦争の惨禍を経た現憲法は、権力の行き過ぎに歯止めをかけ、権力を縛る立憲主義を本旨とする。しかし今、権力がそこから自由になりたがっているかのような政治が続く。
 安倍政権は15年、歴代政権が9条の下で禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制を強引に成立させた。衆院憲法審査会で憲法学者全員が主張した「違憲」の疑いは今でも残る。 
 首相はさらに、戦力の不保持と交戦権の否認をうたう9条2項を残したまま自衛隊を明記する改憲を掲げて、自民党総裁選に臨む。
 民意に寄り添い、説明を尽くし、対話する姿勢が政治に見えなくなったことも不安を駆り立てる。
 沖縄では今月、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、政府と全面対決を貫いた翁長雄志知事が死去した。
 一連の対立の中で、沖縄の苦難を踏まえた対話と熟議はなされたのかどうか。地元では反対の民意が再三示されてきたにもかかわらず、安倍政権は「唯一の解決策」という姿勢を崩さない。
 平成最後の終戦の日。慰霊と平和、そして私たちが置かれた「今」を考える日にしたい。
カテゴリー: 社説


ページトップへ