2018.08.14 08:00

【新日米貿易協議】多国間の枠組み堅持を

 トランプ米政権が保護主義的な通商政策を強める中、日米両政府の新たな閣僚級貿易協議の初会合が開かれたが、議論はかみ合わず、結論は持ち越された。
 自由貿易協定(FTA)を狙いながら2国間交渉を迫る米に対し、日本は多国間による自由貿易を軸とする方針を主張。基本スタンスの隔たりを改めて鮮明にした。
 米が中国や欧州連合(EU)に仕掛ける「貿易戦争」は世界経済の行方を不安定化させている。対米貿易の規模が大きい日本が2国間交渉に引き込まれる事態になれば、国際社会に一層の打撃になろう。多国間の自由貿易の枠組みを堅持しなければならない。
 貿易赤字の削減を目指す米は自動車関税の引き上げを検討しており、日本にも農業分野の市場開放と合わせて要求したとみられる。米への輸出規模が巨額で、日本の基幹産業でもある自動車分野で揺さぶり、牛肉などの貿易枠をこじ開けようとする思惑が透ける。
 自国利益の保護のため、一方的に輸入制限を振りかざす一方、相手国に個別に特例的な制限除外を持ち掛け、譲歩を引き出す。経済大国の優位性をかさに力で押し込む交渉は、自由で公正なルールの下に成り立つ国際貿易を損なわせる。他国の事情を顧みない横暴だ。
 日本は米に対し、自動車の追加関税の対象から外すよう求めたほか、多国間で農産物関税などを引き下げる環太平洋連携協定(TPP)への復帰を促したようだ。日米の貿易促進では合意したものの、個別の議論の溝は埋まらなかった。
 強硬姿勢を崩さない米は、圧力をかけやすい一対一の交渉で有利な条件を勝ち取ろうとするだろう。日米同盟下の安全保障も絡めてきかねないが、貿易ルールに反する不公平な要求に対し日本は決して妥協してはならない。
 日本の米からの輸入自動車への関税は既にゼロで、米は2・5%を課している。日系メーカーは米内の現地生産も増やしている。日本車を米国民がなぜ受け入れ、米国車が日本でなぜ人気がないのか。そうした分析も示さないままの一方的な要求はあまりに強引だ。
 トランプ大統領の「米国第一」の通商政策は11月の中間選挙に向けた支持固めが背景にある。だが、逆効果も見え始めているようだ。中国や欧州との貿易摩擦で、輸出販路を失いかねない支持層から懸念が噴出しているという。輸入品の関税が上がれば、安価な輸入食品などに頼る低所得者の生活も直撃する。
 TPPや日欧経済連携協定(EPA)を主導してきた日本も米との不毛な対立は避けなければならない。米に毅然(きぜん)と向き合いながら、保護主義が招く不利益を明らかにし、多国間貿易がもたらす共通の恩恵を説きたい。貿易戦争拡大の懸念が広がる中、自由貿易の旗を掲げてきた日本が国際社会から期待される役割でもあろう。
カテゴリー: 社説


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