2018.08.13 08:00

【虐待防止対策】「緊急と継続」忘れずに

 東京都目黒区の5歳の女児が両親の虐待によって亡くなった事件を受けて、政府は児童虐待防止の緊急対策をまとめた。
 女児がノートに「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」とつづらざるを得なかった痛ましい出来事を繰り返してはならない。国や自治体などが全力で取り組むよう求めたい。
 今回の事件では反省すべき点が少なからずある。一つは女児一家が香川県から東京都に転居した際、二つの児童相談所間で認識がずれるなど情報共有が不十分で、その後の対応に影響を及ぼした。
 その反省を踏まえた対策では、緊急性が高い場合には児相間で職員同士が対面して引き継ぐことを原則とした。共同での家庭訪問も盛り込んでいる。対応が継続されていくための仕組みが欠かせない。
 また、母親が面会を拒否したことから、都の児相が女児の安全を確認できなかった問題もある。「親との関係をつくることを優先した」とはいえ、積極的に対応しなかったことが、悲劇につながった面は否定できないだろう。
 対策は、虐待通告があってから48時間以内に面会などによって安全確認ができなかった場合、児相が立ち入り調査を実施するとともに、警察との情報共有を進めることをルール化した。
 高知県では10年前に南国市で起きた小学生の虐待死事件を教訓にして、児相に虐待通告があった全ての情報を県警と共有している。共同通信の調査では、こうした対応をしているのは高知県以外では茨城、愛知両県にとどまるという。
 警察との情報共有には慎重意見もある。「警察に知られることを嫌がり、親族からの通報が減る」といった理由からのようだが、増え続ける虐待に児相だけで対応するのはもはや不可能だろう。
 緊急対策の目玉といえるのが、児相で子どもや保護者の相談や指導、支援に当たる専門職「児童福祉司」の大幅な増員だ。2022年度までに約2千人増やし、現在の1・6倍の体制にする。
 児童虐待の相談や通告の件数は年々増え、事案の内容も複雑化しているという。児相の体制強化に向け、専門的な知識を持つマンパワーの確保は喫緊の課題だが、決して簡単ではない。
 児童福祉司が多様なケースについて的確に判断できるようになるには、少なくとも5年以上の経験が必要といわれる。人材を可能な限り早く育成するとともに、実践的な力をより高めていくための工夫などが不可欠となる。
 緊急対策はどれも重要だが、児童虐待の防止に即効薬や特効薬がないのも確かだろう。一過性の対策ではなく、国や自治体をはじめ関係する機関が総力を挙げて継続的に取り組むよう求めたい。
 子どもたちの命が懸かっていることを忘れないでほしい。
カテゴリー: 社説


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