2018.08.11 08:00

【県最賃上げ最大】地域の活力生む循環を

 高知県の2018年度の最低賃金(最賃)が、現行の時給737円から25円、3・39%引き上げられ、762円にアップする見通しになった。高知地方最低賃金審議会が高知労働局長に答申した。
 引き上げ額は3年連続で20円を超え、率と併せ02年度以降で最大になる。中央審議会の高知県の目安額に2円上乗せした。労働者側の要求がかなった形だ。
 安倍政権が昨年3月にまとめた働き方改革実行計画で求めた3%程度の引き上げ目標にも沿う決着だ。高知県の引き上げ額の2桁アップは6年連続になり、県最賃は10年度より120円増える。持続的な引き上げの流れにしたいが、なお根深い課題を残している。
 全国で最下位は脱したものの、依然として低い水準のままだ。最高額の東京は18年度の引き上げで千円に迫り、高知県との差は拡大する。民間の実態調査でも、三大都市圏は既に6月のアルバイトの平均時給が千円を超えている。都市と地方の格差は解消されていない。
 賃金格差の広がりは都市への労働者流出を加速させかねない。高知県の最賃審は16年度に労働者側と経営者側が全国最下位の「マイナスイメージの払拭(ふっしょく)」で協調し、中央審の目安に1円上乗せした。17年度も双方が「時給800円の早期実現」の目標を共有し、20円を超える引き上げを実現してきた。
 今回の審議では、労働者側は目安にさらに2円上乗せを要求した。これに対し、急ピッチの引き上げで負担も増している経営者側は目安より1円マイナスを主張するなど、労使に温度差が生まれた。
 引き上げ幅で双方の溝は最後まで埋まらず、公益委員が経済指標などから2円の上乗せを提案し、15年度以来の採決で決まった。労使共に最賃低迷への危機感は共有しつつも、具体的な対応では必ずしも足並みをそろえられない状況が浮かぶ。
 景気の上向きで県内の雇用や経済指標も改善基調とはいえ、中小・零細企業の体力の底上げは十分ではなく、将来不安も抱えている実情をうかがわせる。来年度以降の最賃議論にも影を落とす。
 雇用機会の創出や賃金の改善は、地域の暮らしやすさや活力に直結する。若者の定住や移住を促し、地方の人口減少、少子高齢化の歯止め効果を期待できる。その好循環を生む賃金環境が求められる。
 高知県はヒトもモノも一極的に集中する高知市と他の郡部との経済的な格差が目立つ。最賃は全ての企業に強制適用される。連年の引き上げが郡部の中小・零細企業に過度の負担になり、経営を圧迫する事態になれば、地域経済の一層の疲弊と格差の拡大を招きかねない。
 好景気とされる首都圏でも既に一部では安倍政権の賃上げ攻勢に企業から悲鳴の声が上がり、「限界」が言われ始めているという。地域の経済基盤の強化や企業の生産性向上など、行政支援が不可欠だ。
カテゴリー: 社説


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