2018.08.09 08:00

【ボクシング連盟】会長辞任で決着ではない

 日本ボクシング連盟の山根明会長が辞任を表明した。一連の不正疑惑の責任を取った形だ。
 山根氏は、助成金の流用や過去の暴力団組長との関係が批判されてきた。大会の不可解な審判判定への関与も取り沙汰されてきた。
 連盟の競技団体としての信頼は失墜した。何より、ひたむきにボクシングに打ち込む選手たちを裏切り、名誉を傷つけた責任は重い。辞任は当然である。
 ただ、これで問題が決着するわけではない。数々の疑惑の真相は見えないままだ。連盟の中で、なぜ不正疑惑が見逃されてきたのかも大きな疑問として残る。
 辞任によってこれらがうやむやになるようでは、連盟の立て直しや信頼回復は望めまい。まずは第三者による徹底した調査が求められる。
 騒動の発端は、都道府県連盟の幹部ら333人による告発だ。助成金を不正流用したことや、かつて奈良県連盟の会長を務めた山根氏が同県選手をひいきしたとされる大会の不正判定疑惑を指摘した。
 山根氏は不正判定を全面否定する一方で、助成金流用は認めた。当時の暴力団組長との交際は「約50年前の話で若気の至り」とした。
 競技団体の清廉性や透明性はフェアプレーの大前提といってよい。山根氏がトップとしての適格性を欠くのは明らかであり、スポーツ庁の鈴木大地長官らが辞任を求めたのも無理はない。
 山根氏は連盟内で終身会長に就任して強権を振るってきた。意に沿わない人物は排除し、周りを「イエスマン」で固めたとの証言もある。告発者数を見ても、連盟内に相当の不満がたまっていたと考えられる。
 疑問なのは、連盟は都道府県連盟も束ねる大きな組織であることだ。理事も30人ほどいる。これほど深刻化するまで声が上がらなかったのだろうか。
 そうであるならば、山根氏だけの問題ではあるまい。全体が古い体質を引きずり、前近代的な組織ではなかったのか。虎の威を借りた振る舞いをする人や忖度(そんたく)する関係者がいたといわれても仕方がない。
 残念ながら、スポーツ界には旧態依然とした上意下達の運営、指導による問題が相次いでいる。レスリングのパワーハラスメントや日本大アメリカンフットボール部の悪質反則もそうだ。
 忘れてはならないのは、こうした問題で最も被害を受けるのは選手であることだ。ボクシングもこのままでは2020年東京五輪などに影響が出かねない。
 山根氏の辞任表明は5分ほどで終わり、不正疑惑への具体的な説明もなかった。全国の選手に向け「本当に申し訳ない」と頭を下げたが、選手たちはとても納得できまい。会長の暴走を許した他の連盟関係者の対応も同様だ。
 選手のことを思うなら、連盟は早急に問題を検証し、民主的な組織に生まれ変わらなければならない。
カテゴリー: 社説


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