2018.08.08 08:00

【入試不正】東京医科大だけなのか

 入試制度を成立させる公平と中立性を根底から踏みにじった。信じ難いほど悪質だ。
 文部科学省の私大支援事業を巡る汚職事件で、前理事長と前学長が贈賄罪で在宅起訴された東京医科大学が、不正入試の内部調査結果を文科省に報告、公表した。
 受託収賄罪で起訴された文科省の前科学技術・学術政策局長の息子ら特定の受験生の点数を恣意(しい)的に加算し「裏口入学」させていたほか、女子と3浪以上の受験生の点数も不当に減らし、不合格にしていた。差別以外の何物でもない。
 医師を志す若者らを裏切り、その努力をないがしろにする不正が、教育機関でまかり通っていたことに驚く。前理事長が指示し、不正合格者のリストや得点操作のマニュアルが学内で作られ、担当者間で引き継がれていた。不正の根は深い。
 内部調査は、400点満点の今年の一般入試1次試験で、文科省の前局長の息子に10点を加点したのをはじめ計6人に最大49点を加えたほか、2次試験でも得点を調整していたと認定した。加点は受験生によって細かく違うなど巧妙で、常習性をうかがわせる。
 調査委員会は、前理事長と前学長が受験生側から謝礼を受け取っていた疑いも指摘。卒業生の子弟らを裏口入学させ、寄付金を多く集めようとした可能性にも言及した。
 難関試験に臨む受験生側の切迫した思いにつけ込み、私欲や学校経営のために入試を悪用していたとすれば、言語道断だ。
 女子受験生らの合格者数を減らす得点操作は、少なくとも2006年度の入試から行われていたという。性別の合格枠などは募集要項にも記載されていなかった。
 結婚や出産で離職する女性医師が多いとして、女子合格者を全体の3割前後に抑え、系列病院が医師不足になるのを避けるためだったとみられる。医療現場の事情があるにせよ、男女差別は許されない。
 本来、女性医師が働きやすい環境づくりで解決すべき問題だ。女性医師の割合は増えており、医師全体の5人に1人を占める。厚生労働省も子育てや介護と両立できる働き方を促し、勤務医の規制緩和などに乗り出している。
 大学側の身勝手な都合で、受験生の夢が理不尽に断たれることがあってはならない。今回の内部調査は対象期間などが限定的で、文科省は大学側に調査の継続とともに、不当に不合格にされた受験生への救済措置などを求めた。当然である。私学助成金にも絡む問題だ。
 医学部入試では、かねて学生らから男子優遇の疑いが指摘されてきたといわれる。東京医科大だけなのか―。受験生にそうした動揺や不信感が広がりかねない。
 文科省自体が医科大入試に絡む汚職や不祥事が相次ぎ、心もとない状況ではあるにしても、まずは受験生保護が最優先である。全ての医学部入試の総点検を急ぐべきだ。
カテゴリー: 社説


ページトップへ