2018.08.05 08:00

【プルトニウム】削減への覚悟が見えない

 政府と電力会社が推し進める原子力政策「核燃料サイクル」に欠かせない物質がプルトニウムだ。使用済みのウラン燃料を再処理して取り出し、原発で再利用する。
 原子力委員会がそのプルトニウムの利用指針を15年ぶりに改定し、初めて「減少させる」とうたった。
 7月に閣議決定したエネルギー基本計画にも「削減」が盛り込まれている。政府や電力会社などがどこまで真摯(しんし)に取り組むのか。覚悟が問われる。
 新指針は、プルトニウムの今後の保有量について現行水準を「超えることはない」と明記。使用済み燃料からの取り出しも「必要な量だけ」認可するとした。
 その上で、通常の原発でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を燃やすプルサーマル発電を進めて消費し、保有量を減らす方針を掲げた。
 強い言葉は並ぶが、問題は具体的な数値目標や削減の行程が一切示されていないことだ。これでは実効性に疑問が湧く。
 昨年末時点で日本は、国内外に計約47・3トンのプルトニウムを保有する。核兵器の原料に用いれば、約6千発分に相当する。
 海外から批判されて当然の量だ。指針の改定も、日米原子力協定の延長に当たり、米国から強い懸念が示された結果であろう。
 問題の根幹には、硬直化した日本の原子力政策があると言わざるを得ない。
 日本は乏しいエネルギー資源を補うためとして、核燃サイクルを進めてきた。柱になったのが、プルトニウムを供給する大型再処理工場の青森県への整備と、それを消費する高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の建設やプルサーマルだ。
 もんじゅは深刻なトラブルが相次ぎ、ほとんど稼働しないまま廃炉が決まった。プルサーマルも東日本大震災後の新規制基準により、拡大が難しくなった。
 プルトニウムの利用はコストの高さも目立ち、大震災では原発そのものの信頼性が失われた。核燃サイクルは事実上破綻しているといってよいだろう。
 それでも政府や業界は旗を降ろそうとせず、指針も核燃サイクルを前提に見直した。
 2021年度に完成予定の再処理工場がフル稼働すれば、年間最大8トンのプルトニウムが新たに生じるという。消費が進まなければ、減るどころか増えかねない。
 プルサーマルが認められている原発は、建設中の大間原発(青森県)を含め計10基だ。このうち再稼働したのは伊方原発(愛媛県)3号機など4基にとどまる。核燃サイクルが目標にする16~18基はあまりに現実性を欠く。
 このままでは国民の信頼も国際社会の理解も得られまい。プルトニウムを減らすなら、まずは核燃サイクルの「幻想」と決別すべきだ。政策の転換が急がれる。
カテゴリー: 社説


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