2018.08.04 08:00

【公文書管理】実効性が伴わなければ

 失われた信頼を取り戻すには程遠い。そう断ぜざるを得ない。
 学校法人「森友学園」を巡る決裁文書改ざんなどを受け、政府が公文書不正の再発防止策をまとめた。
 決裁文書改ざんは、財務省の担当部局が都合の悪い原文を書き換えたり、廃棄したりして国会を欺いた。国民の「知る権利」への背信であり、その根を断ち切る手だてでなければならない。
 再発防止策は、公文書が適切に管理されているのかを監視する体制を強化する。特定秘密保護法の運用状況をチェックする内閣府の独立公文書管理監の権限を広げ、各府省庁を常時点検し、各府省庁にも文書管理の専門部署を新設する。
 国民の目に見える姿勢を示す意図も透けるが、各官庁には既に文書管理の担当が複数置かれている。管理職などが兼務し、チェックが不十分だった実情があったにしても、今回の文書改ざんなどを許した根源は管理体制の問題ではない。
 財務省の文書管理の責任者でもある幹部の指示で公文書がねじ曲げられた。防衛省も自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)の背景を省内の認識不足だったと釈明した。身内同士のチェックの限界を自ら示した格好だ。
 国民の監視のすべを遮断した特定秘密保護法に関わる独立公文書管理監も、その存在そのものが不透明だ。あくまで政府内の一員であり、国民が求める客観性の担保にはなり得まい。
 防止策は、改ざんなど悪質な行為は免職を含む懲戒処分の対象とする。文書管理の担当幹部への研修も実施し、職員の昇進や給与の人事評価に公文書管理の取り組み状況を反映させる。担当者、組織内に公文書管理への緊張感を促す狙いだろう。研修と評価の中身が問われる。
 管理方法の改善策では、公文書の作成や保存から国立公文書館への移管までを全て電子システム化し、いつ、誰がといった変更履歴などを残す。ただ、外形的な証拠とするだけでなく、その変更に合理的な理由があるのかが確認できる仕組みでなければ実効性は期待できない。
 公文書の対象の曖昧さも残している。当局が職員の「個人メモ」と判断すれば、行政の意思決定に関する記載でも保管責任は免れる。恣意(しい)的な文書作成・管理を許す懸念が指摘され続けてきた。
 そもそも、公文書問題が改めて問われるきっかけになった森友・加計学園問題はまだ真相が解明されていない。政府の説明に国民の多数が納得できていない中で、再発防止策は説得力を伴うまい。
 国民はどういう行政文書が作成され、どう保管されているのか分からない。当局が「非開示」「不存在」とすれば、国民は反証するすべもない。独立性が確保され、第三者的な目が届く監視機能の充実が必要だ。公文書管理法は行政活動について「現在および将来の国民に説明する責務」があるとする。法に誠実に従えば、その答えは導かれよう。
カテゴリー: 社説


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