2018.08.02 08:00

【日銀の政策修正】弥縫策の印象が拭えない

 日銀が約2年ぶりに金融政策の修正に踏み切った。0%程度に誘導してきた長期金利に0・2%程度までの上昇を容認する。
 低金利政策は、日銀が2%の物価上昇目標を達成するために導入した大規模な金融緩和策の柱だ。しかし長期化によって、金融機関の収益の悪化や長期金利の元になる国債の市場取引の停滞を招いてきた。
 修正はそれら「副作用」への手当てといってよい。問題は、日銀が同時に、超低金利を当分「維持する」と強く表明したことだ。
 黒田総裁は記者会見で、大規模緩和策の行き詰まりを否定。「(緩和を終了する)出口に早期に向かうといった市場の観測を完全に否定できると思う」とさえ力説した。
 副作用への処置は、景気を刺激する劇薬をさらに投与し続けるため、というわけだ。
 日銀が大規模な金融緩和を打ち出したのは2013年4月のことだ。長期国債や上場投資信託(ETF)の大量購入で市場にお金を供給する「異次元の金融緩和」によって、2%の物価上昇目標を2年程度で達成すると意気込んだ。
 だが、個人消費などの伸び悩みもあり、物価は思い描くように上がらず、追加緩和や金融機関向けの日銀の当座預金にマイナス金利まで導入した。16年9月の金融政策の見直しでは、金利操作も加えた緩和に改めている。
 それでも2%は遠い。物価上昇率は上振れするどころか、日銀は今回、18~20年度の物価上昇率の見通しをいずれも下方修正し、1・1~1・6%とした。
 もはや大規模緩和策の限界と言わざるを得ないが、黒田日銀は大規模緩和にこだわり続けている。
 背景として考えられるのは、政府と日銀が13年1月にデフレ脱却に向け発表した「政策連携」だ。2%の物価上昇率が盛り込まれ、安倍政権の経済政策「アベノミクス」にも位置付けられた。同年3月、総裁に黒田氏が就任する。
 政府が今春2期目に入った黒田氏の続投を決めたのも、政府自身が2%に執着している表れだ。日銀は政府から独立した機関だが、こうした経緯で軌道修正できなくなっているとすれば、政府の責任は重い。
 今回の修正では国債の買い入れの弾力化や、株式市場をゆがめると懸念されてきたETFの買い入れ方法の見直しも打ち出した。批判を踏まえた対策とみられるが、出口が見通せない中ではやはり弥縫(びほう)策の印象が拭えない。
 黒田氏は強気を崩さないものの、2%の達成時期は21年度以降に先送りした。このままでは中央銀行や金融政策への信頼を損ないかねない。
 リーマン・ショック後、世界的に低金利政策が導入されたが、米国は既に段階的な金利引き上げに入っている。欧州中央銀行も金融緩和の縮小方針を打ち出した。日本は周回遅れと言わざるを得ない。出口を探る論議が急がれる。
カテゴリー: 社説


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