2018.07.31 08:00

【肱川の悲劇】ダム巡る防災見直したい

 西日本豪雨で愛媛県・肱川の野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)が緊急放流し、住宅浸水などで住民9人が犠牲になった問題が波紋を広げている。
 当然であろう。安全基準の最大6倍の水が流され、ダムを管理する国土交通省は氾濫を予測していたが、住民に十分伝わっていなかった。
 大洲市は、大規模放流を2時間半前に国交省から伝えられていたが、住民に避難指示を出したのは放流開始の5分前だった。
 ダムの操作や情報提供、避難の呼び掛けは適切だったのか。9人の命は失われずに済んだのではないか。ダムの管理や行政対応に深い疑念を抱かずにはいられない。
 国交省は、放流の操作は「マニュアル通りに行い、適切だった」としている。一方で、情報提供を巡っては課題があったとして、有識者らによる検証組織を立ち上げた。
 未曽有の雨だった。ダム操作もマニュアル通りだったかもしれない。だが、「適切だった」との説明には違和感がある。
 多くの疑問を徹底的に調査し、ダムと河川の防災体制の見直しにつなげる必要があろう。高知県内にも多くのダムがある。対岸の火事にしてはならない。
 ダムが持つ治水効果は大きいが、今回浮き彫りになったのは、貯水しきれないほどの水が流入した場合の対応力だ。
 野村、鹿野川の両ダムは7日、水が満杯になり、流入量をほぼそのまま流す「異常洪水時防災操作」に踏み切った。ダムから水があふれるのを防ぐためだ。
 国交省は両市にこの操作の予定を伝え、放水の警報サイレンも鳴らしたとしている。ところが、住民からは「雨音が強く、聞こえなかった」などの声が上がっている。
 西予市は、国交省の放流方針を受け、大規模放流の1時間余り前の午前5時すぎに避難指示を出したが、浸水などで5人が犠牲になった。大洲市の避難指示は午前7時半まで遅れ、鹿野川ダムの大規模放流は7時35分に始まった。約3千棟が浸水し4人が亡くなった。
 両ダムとも、大雨に備えて事前放流を続けていたようだが、対応が十分だったか検証が求められる。両市は避難指示の徹底や発令のタイミングが厳しく問われよう。
 何より、事態の重さが国交省と両市で共有できていたのか。住民にも重要な放流規模などが具体的に伝わっていなかった。情報を伝えたといっても、「伝わった」とは言い難い典型例だ。
 地球温暖化の影響なのか数十年に1度といわれるような豪雨が頻発している。ダムの管理マニュアルや情報提供、避難の在り方も見直しが避けられまい。
 堤防の整備や河床掘削などのハード面はもちろん、避難訓練の徹底などソフト面も未曽有の災害を想定すべきだ。そのためにも肱川の検証をしっかりと進めなければならない。
カテゴリー: 社説


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