2016.02.06 11:07

高知大地域協働学部が黒潮町で産品、砂浜…資源活用考える

七立栗の魅力について話し合う高知大生と馬荷地区の住民(2015年12月、写真はいずれも高知県幡多郡黒潮町馬荷)
七立栗の魅力について話し合う高知大生と馬荷地区の住民(2015年12月、写真はいずれも高知県幡多郡黒潮町馬荷)
七立栗のスイーツ提案も
 高知県幡多郡黒潮町馬荷には「七立(ななだて)栗」という地域特有の産品がある。1本の枝に20~30個のいがが連なり、甘い実がなるのが特徴。地域の人に聞くと、この“宝物”をどう周知させ、商品にしていくかが、長年の課題だという。高知大学地域協働学部1期生12人は「地域理解実習」の一環で、この栗に着目した。地域の人と一緒に、七立栗にスポットライトを当てようという試みを通して、学びの様子を紹介する。 
  
七立栗の畑を視察する高知大生(2015年11月)
七立栗の畑を視察する高知大生(2015年11月)
 黒潮町馬荷の「七立栗生産組合」(矢野史明組合長)によると、七立栗はもともと、馬荷地区だけに自生していた野生のクリだという。

 いがが枝に鈴なりに数十個実り、糖度が高く甘い。1年に7回収穫できることから、七立栗という名前が付いた。

鈴なりの七立栗
鈴なりの七立栗
 なぜこの地域だけに自生したか、科学的には分かっていない。弘法大師が馬荷の人に親切にされたお礼に、特別にこの栗を贈ったという伝説が残っているほどだ。こんな言い伝えも相まって、地域の人は七立栗を“宝物”のように大切にしてきた。

 しかし、商品としては未開拓だ。実が小さいので、食べ物として売るのではなく、主に観賞用の花卉(かき)として出荷し、JA高知はたを通じて名古屋などに売り出す。2013年には、黒潮町で花の加工品を作る「maprok」でプリザーブドフラワーの花材として商品化した。

 組合員11人が約60アールで栽培し、年間約1万本出荷している。

 矢野組合長(54)は「七立栗という珍しい栗があることを、まず多くの人に知ってほしい。七立栗にはいろいろな可能性がある」と話す。

 maprokから紹介を受け、地域協働学部との交流が始まったのは、こんな思いの時だった。

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 学生たちは「地域資源活用型ビジネス」について学ぼうと、黒潮町に入った。地域で収穫されるドクダミや、キビナゴ、天日塩、カツオなどの産品に加えて、美しい砂浜やカツオ漁そのものをも地域資源と捉え、加工品を手掛ける6次産業や地域おこしに取り組む企業、団体、起業者らから熱い思いを聞いた。

 maprokや七立栗の産地を訪ねたのも、地域資源活用型ビジネスを探るためだ。

 2015年12月26日、馬荷地区の集会所に、鈴木啓之教授ら率いる実習生12人と、地域住民12人が集まった。目的は、七立栗を考えるワークショップだ。

 学生は11月に畑を訪れており、地域の人と顔を合わせるのは2回目。この日初参加の住民もおり「若い人がこんなに集まって」「何事で」と興味津々だ。

 4班に分かれて、七立栗をどう売り出すか話し合った。

 松田柚紀さん=茨城県出身=はドーナツ店でアルバイトした経験から提案した。「七立栗のクリームを作ってみてはどうですか。ドーナツとかケーキに使うんです。若い人に人気が出そう」

 別の班では、山本絵理さん=和歌山県出身=が「調味料として考えてみたい。最近、塩こうじが流行しましたよね。栗も甘みを付ける調味料として売り出したら面白い」と切り出す。

 50~90代中心の組合員は「若い人らは発想が違うね」「こんなこと考えたことなかった」と笑顔を見せた。

  ■  

 鈴木教授は言う。

 「学習の場が地域の力になるんです。われわれ教員が中心になって話すと、アドバイスになってしまう。学生が入ると、地域の人と一緒に気付く、考え合う場になるんです」
 地域の人はどう捉えているだろうか。

 矢野組合長は「七立栗を知ってもらうことに意味がある。今度は実際に畑で作業し、汗をかいてもらいたい。これからも交流を深めたい」と語る。

 七立栗生産組合は2015年度、高知県産業振興計画の地域アクションプランから外れた。2011年から盛り込まれながら、自ら辞退した。矢野さんは「わざわざ知事が黒潮町に来てくれて『頑張ろう』と言ってくれた。でも正直、そんなレベルに達していなかった。品質向上など、まだまだ地盤を固めないと」と話す。

 そんな中での、学生とのコラボレーション。「大学や公の機関が中に入ってくれると相談しやすい。新しい人脈もでき、可能性が広がる」と矢野さんは期待する。
 1月、高知大学で開かれた実習の報告会で、学生たちは黒潮町で出会った人々について「地域のものを見る時、愛情や誇り、情熱があった。そうすることで新しいものが生み出される」と語った。

 企業や団体が得意分野や地域の産品を生かし合う姿に「コミュニティーを互いに良くしていこうという流れを感じた」「私たち学生が協働することで、新たなビジネスの形が生み出せるのではないだろうか」とも。

 今後も馬荷地区をはじめ、黒潮町と学生との関係は続く。地域にとっての宝物が、学生の発想や大学の人脈とつながる。今までと違う輝きが放たれる可能性も、秘めている。

飯野 航平さん
飯野 航平さん
起業家の前向きさ尊敬 飯野航平さん

 私は入学してから約1年間、この学部でさまざまな実習を行ってきました。どの実習も非常に興味深いものであり、地域への理解が今までに比べ、かなり深まったと感じています。

 私は将来、起業して自らの会社を持ちたいと考えています。そのため、実際に起業された方の生の声を聞くという体験は、自分にとって大変重要な意味を持っています。お会いしたどの起業家の方も、経済的な困窮や、病に伏せっている大切な家族を助けるためという動機で起業された方ばかりでした。

 そのような苦労に負けず、前向きな考えを持って積極的に行動される起業家の方々を私は大変尊敬しています。

 学生生活も残すところあと3年です。私は学生の間に起業したいという思いも持っていたため、焦りや不安が入り混じるところではありますが、さらに地域への理解を深めることで、高知県にも還元できるようなビジネスを展開していけるように学習を深めていきたいと思います。

松田 柚紀さん
松田 柚紀さん
6次産業に「信頼」必要 松田柚紀さん

 実習では地域資源活用型事業に触れ、地域資源を生かす鍵は「視点を変えること」だと学びました。

 例えば、砂浜美術館。「砂浜が美術館で漂流物は展示品」、そんな発想は私には今までありませんでした。

 また、共通の課題として見えてきたのは、働き手不足です。草引きや花の選別などの軽作業で人が足りないということから、体験型事業の一環として取り入れるなどの改善ができるのではないかと考えました。

 実習では生産、加工、販売の全てを行う6次産業のさまざまな例を見聞きしました。そこで6次産業とは、どの工程も手を抜くことができない、消費者の信頼の上に成り立つ産業であると知りました。

 そんな6次産業化の成功例で、ドクダミの青汁酒を作る「どくだみ農園」の細川泰伸社長が大切にしていることは「誠実さと人との出会い」だといいます。このことは、同じくお話をお聞きした、漁家民宿・海生丸を営む明神多紀子氏の言葉と重なる部分があり、地域資源を活用する起業家の共通点を見いだすことができました。

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カテゴリー: 教育主要大学特集教育


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