2018.07.27 08:00

【LGBT差別】自民公約の真意を疑う

 〈性的指向・性自認に関する広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定〉〈多様性を受け入れていく社会の実現〉。昨年衆院選で大勝した自民党の公約にそうある。
 大いに具体化してほしいが、同党の杉田水脈(みお)衆院議員(比例中国ブロック)が月刊誌「新潮45」への寄稿で、性的少数者(LGBT)に対する行政支援が「度が過ぎる」と非難した。公約に反し、社会の多様性を否定したと同じだ。
 寄稿では「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるのか。彼ら彼女らは子どもをつくらない、つまり『生産性』がない」などと持論を記した。あからさまな差別、排除の考え方で、優生思想さえ想起させる。非常識と言うほかない。
 そもそも、LGBTの存在を「生産性」に絡めて疑問視する思考が強引で、理解に苦しむ。
 「同性婚を認めれば、兄弟婚や親子婚、ペット婚や機械と結婚させろという声も出てくるかもしれない」「歯止めがきかなくなる」とも主張する。飛躍が過ぎ、多様性の議論とは懸け離れる。それこそ「度が過ぎる」だろう。
 LGBTへの差別や偏見をなくし、世の中をより多彩に、より豊かにしていく。共生社会へ高まる要請であり、国際的なコンセンサスであることはもはや言わずもがなだ。そのために政治や行政、民間が知恵を出し合い、共に手を携えていく時代である。
 同性愛カップルを夫婦と同等に認める制度を東京都渋谷区が2015年に導入以来、全国の自治体に広がっている。LGBTを支援する企業も出始めている。イメージアップにつながるからだ。
 電通の15年の調査では、全国で13人に1人がLGBTと推察される。どれほど多くの性的少数者が息苦しい人生を強いられてきたことか。人の痛みに対する杉田氏の認識を疑わざるを得ない。
 五輪憲章も「性的指向による差別」を禁じ、20年東京大会は「多様性と調和」をビジョンに掲げる。性的少数者の権利保護は世界の共通認識だ。そうした国内外の情勢も踏まえ、自民党も選挙公約に書き込んだのではないか。
 野党などの批判も受け付けない様子の杉田氏は議員や党人の資質、資格が問われるところだが、同党の二階幹事長は「人生観もいろいろある」と静観する。杉田氏の主張を容認したとも受け止められ、党公約の真意がただされよう。
 自民党内には伝統的な家族観へのこだわりが根強く残る。二階氏も含め時代錯誤的な発言で反発を招くケースが多い。保守層の支持を狙って意図的に発しているのではないかとの指摘もある。
 「1強」の安倍政権下で暴言や失言が止まらない。どういう混乱を起こし、どれほど人を傷つけるのかへの想像力を欠く。「数の力」のおごり、緩みが透ける。
カテゴリー: 社説


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