2018.07.26 08:00

【請求内容漏えい】情報公開の根幹を損なう

 情報公開制度を所管し、適切な運用に取り組まなければならない総務省のトップが、公開請求を巡る情報の漏えいに関わっていたことが分かった。
 民主主義に欠かせない要素として定着した情報公開制度だが、その根幹を大きく損ないかねない深刻な問題といってよい。
 情報の漏えいは、野田総務相の事務所関係者が仮想通貨関連会社の関係者を伴って金融庁の担当者と面談し、仮想通貨販売規制について説明を受けた問題を巡って起きた。
 5月初め、朝日新聞の記者がこの面談記録を金融庁に情報公開請求。同庁が開示決定する前の同月23日、同庁の情報公開担当者が総務省の職員に、開示決定通知書などを手渡していた。その際、朝日新聞が公開請求したことも伝えたという。
 この情報は同日中に野田氏に報告されたが、それにとどまらない。野田氏は5月下旬に開かれた記者との懇親会の席で情報公開請求の内容を漏らした。
 情報公開法は請求者のプライバシーを保護する規定を設けていない。だが、2016年に地方議員の不正受給を巡って、政務活動費の情報公開を請求した人の氏名などが、議員側に伝えられて大きな問題となったことがある。
 その際、総務省は個人情報の適切な取り扱いを要請する通知を全国の自治体と議会に出している。請求者の個人情報を第三者に提供するのは不適切な運用であり、開示請求の萎縮や制度の信頼性の低下につながる恐れがある、との指摘は当然といってよい。
 野田氏が総務相に就任する前の話ではあっても、知らなかったでは済まされない。本来なら公開を請求した人と請求された側しか知らない情報を職員から聞いたとき、疑問を覚えなかったのだろうか。
 記者会見で野田氏は、特段の問題意識を持つことなく、記者との懇親会で話題にしたと述べた。反省を口にしたものの、これでは資質を問われても仕方あるまい。
 金融庁の対応に問題があることはいうまでもない。内部調査に対し、総務省側に情報を伝えた職員は「閣僚が関わっているので、情報を共有した方がよいと思った」と説明しているという。
 政権への影響を懸念して配慮したのだろう。加計、森友学園問題などと同じような、官僚による忖度(そんたく)といってもよい。菅官房長官は記者会見で否定したが、各府省庁で同様の漏えい行為が常態化しているのではないかとの疑問さえある。
 再発を防ぐための取り組みが欠かせない。情報公開制度の趣旨について、各府省庁で改めて徹底する必要がある。情報公開法にこの種の情報漏えいの防止規定を設けることを検討してもよいだろう。
 公文書をはじめ、行政機関が保有する情報の公開は民主主義を支える基盤だ。それを損ねる行為を見逃すわけにはいかない。
カテゴリー: 社説


ページトップへ