2018.07.25 08:00

【G20共同声明】存在意義を失いかねない

 トランプ米政権が仕掛けた制裁関税の影響が広がる中、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、貿易摩擦の激化を懸念し、世界経済の先行きに強い危機感を示す共同声明を採択した。
 経済成長の下振れ回避へ、関係国が互いに「対話と行動」に努めていく重要性も確認した。だが、過熱する貿易摩擦を抑止する具体策は盛り込めなかった。
 G20は今年3月にも、保護主義の広がりを防ぐため関係国の対話を確認したものの、その後、米国が他国の反対を無視して輸入制限を強行。これに中国、欧州連合(EU)が関税の報復措置を発動する事態を許した。今回の共同声明もその実効性が揺らぐ。
 米のムニューシン財務長官は「米国が保護主義だという証拠は全くない」と強硬姿勢を崩さず、他国をけん制した。EU側も「米国が新たな制裁関税を課したら報復するしかない」とし、「対話と行動」の声明とは裏腹の内実をあらわにした。
 世界経済の広がりから、先進国が新興国とも連携し、多国間の利害を調整するのがG20の目的だ。リーマン危機後に協調体制を強化し、自由貿易の重要性を確認し合いながら、反保護主義を掲げてきた。
 「米国第一」主義を前面に一方的に強硬策を繰り出し、国際社会を混乱させるトランプ米政権に自制を促し、協調のテーブルに引き戻す。それが本来、G20に期待される機能のはずだが、貿易戦争の歯止め策を打ち出せなかった今回の共同声明は形骸化を疑わせる。
 共同声明は世界経済の成長を予測する一方、欧米の金融引き締めによる新興国からの資金流出などを懸念し、不況に転じる恐れも示した。各国に新興国経済のリスクの監視を呼び掛けた。
 国際通貨基金(IMF)も米による制裁関税が招く「貿易戦争」を「先進国と新興国双方の景気を減速させかねない」と指摘。世界の国内総生産(GDP)が最悪の場合、0・5%縮小すると試算するほか、経済成長率予測の大幅な下振れも想定する。
 そうした懸念をよそにトランプ米政権は、さらに輸入自動車への高関税を検討するほか、中国やEUに対し「為替操作をしてきた」との批判も始めた。「自国第一」の強引な通商政策が世界経済の悪化を招き、結局は自国に不利益をもたらすことを米は自覚すべきだ。
 自動車関税をはじめ貿易戦争は日本の経済を巻き込み、改善基調の景気の先行きを不透明にする。その打撃は安倍政権が2019年10月に予定する消費税10%への引き上げにも影を落としかねない。
 G20財務相・中央銀行総裁会議は来年、20年の節目を迎える。自由貿易の必要性を米に改めて説き、横暴な保護主義を修正させなければ、存在意義を失う。議長国を務める日本は経済大国の一角として、その主導力を発揮したい。
カテゴリー: 社説


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