2018.07.23 08:00

【日欧EPA】1次産業の支援は万全か

 日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)に署名した。それぞれ国内・域内の承認手続きを経て来年3月までの発効を目指す。
 農産物や工業製品について9割以上の品目で、関税が即時撤廃されたり段階的に引き下げられたりする。世界の貿易総額の4割を占める最大級の自由貿易圏が誕生する。
 輸入食品などの価格が下がれば消費者には歓迎されよう。半面、国内の農林業などは厳しい競争にさらされる恐れがある。署名に至るまでの政府の説明が十分だったとも言いがたい。
 承認手続きは今秋の臨時国会が想定される。1次産業への支援策は万全か。丁寧な議論を求める。
 EPAが発効すると、日本が得意とする自動車や家電などの輸出拡大が期待される。国内市場は人口減少で先細り状態にある。海外市場に活路を見いだす必要性は、よりいっそう高まっていよう。
 保護主義的な米トランプ政権をけん制する意義も大きい。
 米国は安全保障を理由に鉄鋼とアルミニウムの輸入を制限。中国からの輸入品には知的財産権侵害を理由に制裁関税を発動した。これに中国や各国も報復措置を講じるなど「貿易戦争」の様相を呈している。
 日欧EPAなどで米国を包囲することにより、こうした局面を打開できるかもしれない。高関税によって高い輸入品を買わされる米国民の不満が高まれば、政府に政策転換を求める可能性もある。自由貿易の網の目からこぼれることのデメリットを、米国に粘り強く訴えていかなければならない。
 一方で、日欧EPAを巡る懸念は積み残されたままだ。
 高知県は県内農林水産物の年間生産額が、7億2300万円~14億4300万円減ると推計している。
 最も影響が大きいのは、8年目に関税が撤廃される構造用集成材だ。輸入増に伴い県内生産は最大7億8千万円減少する見込み。国産材利用拡大の切り札として県が力を入れている「直交集成板(CLT)」も欧州産が安く、脅威となろう。
 豚肉ではブランド力のあるイベリコ豚などの値下がりが想定され、養豚農家の危機感は強い。EPA発効で国内価格が低下し、それとともに農家の生産意欲も低下、生産量の減少につながる―。そんな悪循環に陥る恐れは拭えていない。
 国は欧州の木材製品に対抗するため、林道整備や加工施設の効率化を推進。畜産農家の機械化を後押しし、赤字補塡(ほてん)割合を現行の8割から9割に拡充する。国産チーズのコスト削減や高品質化も支援する。
 こうしたEPA対策が農家らの足腰強化につながるのか。過去の支援策でも見られたような予算の「ばらまき」に終わらないか。国会でしっかり議論し、検証し、絶えず見直していかなければならない。
 自由貿易の推進は必要でも、地域の産業をこれ以上、犠牲にすることは許されない。
カテゴリー: 社説


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