2018.07.20 08:00

【受動喫煙防止法】命を守る実効性担保せよ

 緩い規制に「骨抜き」の批判は免れまい。今後も継続的な議論が必要な決着と言えそうだ。
 他人のたばこの煙で健康を害する受動喫煙の対策強化へ、多くの人が集まる建物内を罰則付きで原則禁煙とする改正健康増進法が成立した。
 2003年施行の健康増進法は、公共の場所の管理者に受動喫煙防止を求めてきたが、努力義務にとどまっていた。
 世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのない五輪」を推進。20年の東京五輪・パラリンピックを控え、規制強化は政府の課題でもあった。
 対策は段階的に進む。来夏をめどに病院や学校、行政機関、保育園が屋内完全禁煙になる。20年4月からは、最も受動喫煙をする機会が多いとされる飲食店や職場、ホテルの客室以外の場所が原則禁煙となる。
 しかし、問題は規制の抜け穴が大きいことだ。
 当初の厚生労働省案は、「例外」を店舗面積が30平方メートル以下のバーやスナックに限っていた。だが、客離れを心配する小規模飲食店などの団体や、たばこ業界に配慮する自民党のたばこ議員連盟が「待った」をかけ、大きく後退した。
 法律は結局、資本金が5千万円以下で、客席面積100平方メートル以下の既存店を例外とした。この規制では、飲食店の55%が喫煙を認められるという試算がある。これでは防止策とは言えまい。
 五輪を開催する東京都は既に条例を成立させている。従業員を雇う店全てを規制対象とした。法よりも厳しく、都内の約84%の飲食店で喫煙できなくなる。
 加藤厚労相は国会審議で「法案は全国統一的な最低限の規制。条例で上乗せの規制を課すことはあり得る」と述べている。自ら「骨抜き」を認め、自治体に対応を丸投げするかのような発言にはあきれる。
 ただ、東京都のほかにも、健康、長寿を主要テーマに25年の万博誘致に取り組む大阪府・市も、上乗せ条例を検討する動きがある。今後、地方自治体の判断が問われるケースが出てくることも考えられよう。
 受動喫煙対策は当然、五輪や万博だけに向けたものではない。
 厚労省の資料では、日本では受動喫煙が原因で、肺がんや虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群となり、年間約1万5千人が死亡しているという推計がある。
 「吸う権利」は否定しないにせよ、他人の健康を害してもよいことにはならない。喫煙者も十分に認識しておくべき現実だろう。
 国会審議では、自民党議員にやじを浴びせられた日本肺がん患者連絡会の代表が、「健康と命を守る視点に立って議論が行われているのか疑問だ」と訴えた。日本対がん協会の役員は、例外規定の見直し時期を工程表で明確にするよう求めている。
 政府と国会は、国民の健康と命を守る視点からなお議論を深め、実効性を担保する取り組みが必要だ。
カテゴリー: 社説


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