2018.07.19 08:00

【米露首脳会談】不可解な米のすり寄り

 トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が初めて公式会談を行った。両首脳は互いに核軍縮で連携する考えで一致し、2021年に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)の延長などに意欲を表明した。
 冷戦後最悪といわれる両国関係の緊張緩和や対話は歓迎される。二大核大国の軍拡競争の歯止めに期待感も浮かぶ。北朝鮮を非核化に向かわせるためにもロシアの協力は中国とともに欠かせない。だが、今回の会談では具体的内容での合意はなく、その実現の道筋は見通せない。
 トランプ政権は今年2月、ロシアなどを想定した核戦略の新指針を打ち出し、ロシアも米に対抗する核兵器開発を公表したばかりだ。そうした解決すべき核軍縮の課題は積み残された。共同記者会見で強調した「建設的な」対話のアピール通りの成果は乏しい。
 むしろ、ロシアへのすり寄りとも映るトランプ氏の「親ロ」姿勢が際立った。
 16年米大統領選へのロシアの介入疑惑を巡り、トランプ氏は介入を否定するプーチン氏の主張を受け入れた。この疑惑では米国の情報機関がロシアの関与を捜査し、米連邦大陪審がロシア情報機関の当時の当局者12人を起訴しており、自国の情報機関を現職大統領自らが否定する形になった。
 敵対する国の肩を持つような姿勢には、米国内の与党共和党などからも厳しい非難が噴出し、トランプ氏は一転、撤回に追い込まれた。プーチン氏に特段の気遣いをするようなトランプ氏の言動はその影響への思慮を欠き、奇異にすら見える。
 ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の強制編入問題でも、トランプ氏は踏み込んだ議論を避けたようだ。戦後の国際秩序を踏みにじるロシアの独善、横暴を看過してはならないはずだ。
 逆に、クリミア編入で欧米から経済制裁を受ける側のプーチン氏が「新時代の米ロ関係」の構築をうたい、ロシアを敵視してきた冷戦思考の払拭(ふっしょく)を国際社会にアピールする場になった。
 トランプ氏はロシア寄りをにじませる一方、同盟関係にある欧州連合(EU)に強硬的な通商政策を仕掛け、ロシアの軍事的脅威に対峙(たいじ)する北大西洋条約機構(NATO)の加盟国には防衛費の負担増を迫る。そのツイッターには、同盟国へのどう喝や口汚い中傷の文言が並び連なる。
 「米国第一」主義や国内支持優先のトランプ氏の外交手法は、米国が民主主義や法の支配を基軸に主導し、築き上げてきた同盟を変質させかねない。一方的な利害の押し付けで同盟を分断させ、国際秩序の安定をかき乱す横暴は許されない。
 それは同盟国に反米感情を植え付け、結果的に自国の不利益として跳ね返って来よう。大国の威信を傷つけていることをトランプ氏は自覚すべきだ。
カテゴリー: 社説


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