2018.07.14 08:00

【米中貿易摩擦】世界経済を脅かすリスク

 米中の貿易摩擦は報復の連鎖に歯止めがかからず、本格的な「貿易戦争」に発展しかねない気配を見せている。
 世界首位と2位の経済大国が幅広い製品に関税をかけ合えば、ことは2国間の問題では済まなくなる。世界経済は景気後退の大きなリスクを抱えたといえる。
 トランプ米政権は今月6日、中国の知的財産権侵害に対抗する制裁関税を発動した。年間約340億ドル(約3兆8千億円)相当の中国製品に25%の関税を上乗せする。
 中国政府は同時刻に、同じ規模の報復関税発動に踏み切った。米国の追加関税に関して、世界貿易機関(WTO)に提訴もした。
 米国が標的にしたのは、中国から輸入する情報通信衛星などハイテク分野の製品が中心だ。中国は米国の重要産品である大豆や牛肉、自動車などを対象にした。
 事態はこれで収まらない。トランプ大統領は中国の反撃措置への報復として、来月に第2弾、9月にも第3弾の追加関税の検討を指示した。中国も米国との全面対決に備える構えだ。報復の連鎖が現実味を帯びてきた。
 トランプ大統領が中国に貿易戦争を仕掛けたのは、知財権の侵害もあるだろうが中国が最大の貿易赤字国であることが理由だろう。しかし貿易の不均衡は、高関税を課せば解決できるというものではない。
 相手を力任せにねじ伏せようとしても、同等の痛みが跳ね返ってくる。中国から大量に輸入している安い商品に関税が上乗せされれば、被害を受けるのは米国の消費者だ。「貿易戦争に勝者はいない」とされる理由である。
 米中二大国の報復合戦がエスカレートすれば、悪影響は日本にも及ぶ。中国に進出した日系企業は、中国の生産拠点に電子部品などを輸出し、それらを組み込んだ中国企業の製品が米国に輸出されている。
 米国の追加関税が上乗せされれば日系企業の採算は悪化し、生産拠点の東南アジアなどへの移転を迫られる可能性がある。米中対立のこれ以上の激化は避けたい。
 トランプ氏の「米国第一」主義は、欧州連合(EU)などの同盟国に対しても容赦がない。既にEUとも深刻な貿易摩擦に陥っているが、特に影響の大きい欧州製自動車への高関税検討を指示している。
 トランプ氏の手法は、WTOの裁定を待たず、一方的に制裁を科すやり方だ。戦後の自由貿易のルールを破り、国際秩序の破壊につながりかねない。
 米中二大国の全面対決は規模の大きさという点で、貿易の停滞を招き、世界経済に悪影響を招く懸念が強まっている。どこかで報復の連鎖を断ち切らないと、手に負えない大火事に発展する。
 米中はじめ各国の指導者の冷静な対処を、改めて求めておきたい。繰り返すが「貿易戦争に勝者はいない」のだから。
カテゴリー: 社説


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