2018.07.11 08:00

【地制調スタート】押し付けは許されない

 地方の行財政制度を検討する第32次地方制度調査会(地制調)が初会合を開き、人口減少と高齢化が深刻になる2040年ごろの自治体像を描く議論をスタートさせた。
 どういう新たな制度を打ち出すにせよ、地方自治の根幹を損なうような上からの押し付けはあってはならない。そのことをまず強く求めておきたい。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、40年の総人口は1億1千万人余りと15年より1600万人余り減少。団塊ジュニア世代も高齢者の仲間入りし、人口の3分の1超が65歳以上となる。
 一方で、15~64歳の生産年齢人口は約6千万人と現在より1500万人余りも減る。地方では9割以上の市町村で人口減少が見込まれ、40~50%減る自治体も少なくない。
 自治体が提供している医療や福祉、教育などの行政サービスは、産業振興といった施策も含め、維持できなくなるかもしれない。「現状のままではだめだ」との危機感を持って、地制調が自治体の在り方を検討することに異論はない。
 問題はその方向だ。地制調が議論のたたき台にするという、総務省の二つの有識者研究会がまとめた報告書には懸念が拭えない。
 自治体行政を巡る研究会の報告書は「個々の市町村が全分野の施策を手掛けるフルセット主義の脱却」を掲げ、連携して行政サービスを担う態勢を整えるため、複数の市町村で構成する「圏域」を行政主体として法制化するよう提言している。
 単独では困難な事業に複数の自治体が共同で取り組む広域連携は、これまでに多くの分野で実績がある。高知市と県内33市町村が今春発足させた「れんけいこうち広域都市圏」のような「連携中枢都市圏」もその一つだ。
 だが、法制化して画一的な圏域制度を地方に押し付ければ、地方の独自性を奪うことにつながりかねない。圏域内の中心都市に機能が集約され、周囲の小規模自治体が埋没するという、合併時と同じような問題が浮上する懸念もある。
 地方議会の在り方も同じだ。有識者研究会の報告書は、議員の兼業・兼職制限を緩和する「多数参画型」と、少数の専業的な議員で構成する「集中専門型」の2案を示し、議員のなり手不足に悩む自治体は条例でどちらかを選ぶよう求めている。
 これに対し、地方の側から批判の声が上がっている。国が類型化した新制度の枠組みを作り、地域が選ぶのは「地方分権改革に逆行する」という全国町村議会議長会の指摘は的を射ていよう。
 地制調の初会合でも、委員の全国市長会長や全国町村会長らから強く反発する意見が出た。2年以内にまとめる答申は、今後の地方自治のありように深く関わってくる。
 地方の実情に正面から向き合い、地方の思いが具体策として反映されるような、丁寧で中身のある議論を期待したい。
カテゴリー: 社説


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