2018.07.09 14:40

高知県西部に甚大な被害 宿毛で観測最多雨量 大月・女性死亡

裏山が崩れ、女性が死亡した民家(8日午前9時50分ごろ、大月町一切)
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裏山が崩れ、女性が死亡した民家(8日午前9時50分ごろ、大月町一切) 2)
 高知県地方は7月8日、宿毛市で1時間に108ミリの猛烈な雨を観測するなど、県西部で記録的な大雨となった。幡多郡大月町で土砂崩れで女性1人が死亡し、男性1人が行方不明となったほか、宿毛市で市街地が浸水。気象庁は8日朝、同市など県西部の6市町村と愛媛県南部に、高知県内では初めてとなる大雨特別警報を発表した。

 高知地方気象台によると、宿毛市では午前6時までの3時間に263ミリを観測し、午前5時8分までの1時間雨量108ミリとともに同地点の観測史上最多雨量を記録した。大月町でも午前4時ごろから1時間に80ミリ以上の猛烈な雨となった。気象庁は8日午前5時50分に宿毛市、土佐清水市、四万十市、大月町、幡多郡三原村、高岡郡四万十町に大雨特別警報を発表。8日午後2時50分に解除した。

 大月町一切では会社員の矢羽田(やはた)玉恵さん(58)の家の裏山が崩れて自宅が倒壊。1人暮らしの矢羽田さんが死亡した。

 大月町内では、県道を車で通っていたとみられる土佐清水市本町の会社員、大黒浩平さん(26)と連絡が取れなくなっている。8日午前5時55分ごろ、「大黒さんと連絡が取れない」と地元消防に通報が入った。宿毛署によると、大黒さんは土砂崩れなどに巻き込まれた可能性がある。県道は複数の箇所で土砂崩れが発生しており、捜索は難航。重機で土砂を取り除きながら捜索している。

 宿毛市の浸水は、市役所がある中心部など広範囲に広がり、民家約260戸が漬かった。

 香南市では、牛乳配達中に車ごと香宗川に流された香南市香我美町徳王子の百田和史さん(43)のものとみられる軽乗用車が香我美町下分で発見された。百田さんは見つかっていない。連絡が取れなくなっていた香我美町舞川の3世帯4人は8日、全員の無事が確認された。

 これまでの大雨で県内では1人が死亡し、2人が行方不明。県によると、9日午前10時現在、10市町村で792世帯1405人が孤立している。

 日本郵便四国支社によると、今回の大雨による局舎の被災などで9日午前10時現在、立川郵便局(長岡郡大豊町)▽岡ノ内郵便局(香美市)▽宿毛西町郵便局(宿毛市)▽橘浦郵便局(大月町)▽大井簡易郵便局(安芸市)―の県内5カ所の郵便局が窓口業務を休止している。

「隣の家つえちょる」 懸命の救助届かず
 8日午前6時前、幡多郡大月町一切の消防団員、堀渕竜矢さん(37)は、家の玄関を出たところで信じられない光景を見た。

 「隣の家がつえちょる。消防に電話せえ」。妻に叫んだ。会社員の矢羽田(やはた)玉恵さん(58)の家が土砂崩れで倒壊していた。未明からの雷雨は、すぐそこの裏山が崩れ、目の前の家が崩れる音が聞こえないほど激しかった。

 堀渕さんは矢羽田さんの長男と知り合いで、「何かあった時は頼む」と言われていた。降りしきる雨の中、集まった約20人の消防団員が必死で瓦を取り除き、バールなどを使って屋根板を剥いだ。

 1時間ほどで体が見えたが、矢羽田さんは屋根のはりとベッドに挟まれ、助け出すことはできなかった。「屋根は人間が持ち上げられる重さじゃなかった」

 複数の住民が、幡多地域で大規模被害が出た2001年の西南豪雨以上に激しかったという豪雨。坂の多い集落の道は滝のようになり、あちこちで土砂崩れと冠水が発生した。午前9時半ごろ、ようやく重機が到着し矢羽田さんを家の外に運び出したが、死亡が確認された。

 近くに住む矢羽田さんの父親、福田文夫さん(79)は、前日夕方に訪ねてきた娘に「怖いと思ったらこっちに逃げてこいと言うたが…」と言葉を詰まらせ、「今は(気持ちが)うるそうてたまらん」と口元を震わせた。

 近くに住む80代の男性は「(矢羽田さんは)まじめで働き者。両親は玉恵さんをすごく頼りにしていた。こんなことになるとは」と話した。

未明からの大雨で広い範囲で浸水した宿毛市中心部 (8日午前6時45分ごろ、同市中央7丁目)
未明からの大雨で広い範囲で浸水した宿毛市中心部 (8日午前6時45分ごろ、同市中央7丁目)
宿毛市261戸浸水
 宿毛市では8日午前4時ごろから市内各地の水路から水があふれ、広い範囲で住宅や商店などが浸水した。宿毛市によると、3時間ほどでほとんどの地域で水は引いたものの、261戸(床上57戸、床下204戸)が浸水した。宿毛市担当者は「数はもっと増えるだろう」としている。

 宿毛市中心部の市役所周辺では大人の膝あたりまで浸水。近くで衣料店を営む浅山俊員(としかず)さん(83)=中央1丁目=は「ここで50年商売しているが初めて。今年いっぱいは店を続けるつもりだったが、もう店を閉じます」と肩を落としていた。

 宿毛市中心部から3キロほど離れた県道宿毛城辺線沿いまで、土地が高くなっている所を除いて一帯に赤茶色の濁流が流れ込んだ。深い所で50~60センチに。家屋や道路に泥が積もり、雨の降る中、住民らが手分けしてかき出した。

 宿毛西町郵便局(西町1丁目)の局舎内には床に3センチほどの泥がべったり。松田憲周(のりひろ)局長(51)は「床のコンセント類がやられたので、すぐに業務を再開できないかもしれない」と話していた。(高知新聞取材班)

大雨特別警報
 8日に県西部に出された大雨特別警報は、「数十年に一度」レベルの大雨や暴風、高潮などが予想されるとして気象庁が市町村単位で発表する。具体的な降水量の基準を、48時間か3時間の雨量が「過去50年に一度の値を超えた場合」と規定し、土砂災害や浸水害の危険度なども考慮して判断する。

 88人の死者・行方不明者が出た2011年の紀伊半島豪雨を教訓に、従来の「警報」の基準をはるかに超える災害の危険を呼び掛けるため、2013年8月から運用を始めた。

 今回の大雨では11府県で大雨特別警報が発表された。高知県内の6市町村と愛媛県については、「3時間雨量」が規定に該当した。

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カテゴリー: 社会西日本豪雨幡多災害・防災


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