2018.07.08 08:00

【大飯原発訴訟】気になる司法判断の流れ

 原発は安全といえるのか―。東京電力福島第1原発事故を受け、問われ続けるこの問題にまた一つ、司法の判断が加わった。
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止め訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部は、差し止めを認めた一審の福井地裁判決(2014年)を取り消した。住民らが逆転敗訴した。
 差し止め訴訟は仮処分の申し立てと異なり、確定するまで効力を持たない。大飯3、4号機はことし3~5月に再稼働しており、控訴審判決は事実上、これにお墨付きを与えたことになる。
 判決で注目すべきは「2基の危険性は社会通念上無視し得る程度にまで管理・統制されている」と認めた点だ。住民らの生命と生活を守る人格権を侵害する「具体的危険性はない」と言い切った。
 一審とあまりに対照的だ。
 福井地裁判決は、「よって立つ」指針として人格権を挙げた。福島の事故のような被害を招く「具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象」と位置付け、原子炉規制法などに「左右されない」とした。
 その上で、関電が策定した大飯原発の基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を上回る地震発生の可能性などに言及。大飯原発の安全性を「楽観的」「脆弱(ぜいじゃく)」と批判した。
 福島事故で原発の「安全神話」は崩壊した。「想定外」におびえる住民に寄り添った判決といってよい。これに対し二審は、関電側の主張を全面的に採用した形だ。
 原子力規制委員会の新規制基準は最新の科学的、専門的知見を反映したもので、その基準と規制委による大飯3、4号機の適合判断はいずれも不合理な点はない、とした。
 最高裁は、1992年の四国電力伊方原発を巡る判決で、判断は「行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきだ」との見解を示している。
 名古屋高裁支部もこの枠組みを踏襲したといえよう。福島事故の後、全国で相次ぐ原発の運転差し止めを巡る多くの司法判断も同様の流れにある。
 訴訟の控訴審判決は今回が初めてで、係争中の同様の訴訟に与える影響は少なくあるまい。規制委の前委員長は新規制基準が「絶対安全とは申し上げない」と発言したが、司法が新規制基準を重視する流れが加速する可能性がある。
 今回の判決は原発の廃止・禁止にも触れている。「判断は司法の役割を超え、国民世論として幅広く論議され、立法府や行政府の政治的な判断に委ねられる」とした。
 司法の立ち位置の強調にも、議論の呼び掛けにも聞こえるが、原発の危険回避には廃止を急ぐことが最善ではないのか。
 国際的には再生可能エネルギーが重視される方向にあるが、日本政府は原発回帰が鮮明だ。司法判断の流れも気になる。原発をどうするのか国民的論議が不足している。
カテゴリー: 社説


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