2018.07.04 08:00

【サッカーW杯】夢をつないだ日本代表

 世界の強豪を追い詰めた懸命のプレーに心を揺さぶられた。無念の結末に涙を流した選手たちは、胸を張って帰国してほしい。
 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会の決勝トーナメント1回戦で、日本代表はベルギーに2―3で逆転負けした。
 後半早々に見事な連続得点で2―0とリードした。日本初の8強へ夢を膨らませたファンも多かっただろうが、西野朗監督は「本気のベルギーがそこにあった」と振り返った。
 延長突入目前の失点には悔しさも残るが、「たら、れば」を言えば切りがない。国際サッカー連盟(FIFA)ランキング3位を相手に、圧倒的に不利という下馬評を覆す善戦を演じた選手たちをたたえたい。
 これほど議論を呼んだ代表チームもないだろう。
 昨年8月にW杯出場を決めた後は低調な試合が続き、大会2カ月前にハリルホジッチ前監督が電撃的に解任された。日本サッカー協会の決定を疑問視するファンの批判は、西野ジャパンへの期待と人気の低さになって表れた。
 選手選考もベテラン中心で、「おっさんジャパン」とやゆされた。前体制で冷遇された本田圭佑選手らの復権は、スポンサーへの配慮が勘ぐられ「忖度(そんたく)ジャパン」という声まで聞こえてきた。
 チームはそんな批判を自らの激闘で吹き飛ばしたと言っていい。
 1次リーグは、相手選手の反則による一発退場という幸運も生かして勝利をもぎ取ったコロンビア戦、取られては取り返す熱戦になったセネガル戦と続いた。ファンは格上相手に演じた攻めるサッカーを「手のひら返し」で喜んだ。
 ところが、リーグ突破が懸かったポーランド戦の終盤に見せた時間稼ぎのパス回しが、再び議論を呼ぶ。西野監督の指示は、国内外に賛否両論を巻き起こした。
 全てを失う恐れがあっても、常に前に出るのがスポーツマン精神なのか。プロの勝負ならば、ルールと状況を考えて確率が高い方に賭けるべきなのか。双方に理はある。何が正しいのかは一概には言えまい。
 ただ、挑戦権を手にしたベルギー戦で、選手たちは本来の攻撃姿勢で全てを出し切った。世界が驚き、称賛した戦いぶりを見た今は、西野監督の「理」が腹に入ってくる。
 惜敗した直後、西野監督は「追い詰めたが、何が足りないのか…」とつぶやいた。次はその課題と向き合う4年になるのだろう。
 Jリーグは今年、開幕25周年に当たる。38都道府県にクラブがあり、地域に根差した文化とレベル向上を目指している。その土台を強化し、世界のトップクラブで活躍する選手をなお輩出してほしい。
 代表チームは世代交代期にある。今後、W杯で上位の常連になるには、長期的視野を持ったチームづくりや選手層の厚さも必要だろう。
 予想を覆す16強入りは、ファンの夢をつないでくれる健闘だった。

カテゴリー: 社説


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