2018.07.03 08:00

【教員不足】現実的な課題に向き合え

 全国47都道府県のうち高知県を含む5割以上、さらに20政令指定都市のほぼ半数で、公立の小中高校の教員が定数に達していないことが共同通信の調べで分かった。少なくとも計600人不足しており、実際の不足数はさらに多いとみられる。
 1970年代の第2次ベビーブームへの対応で採用した教員の大量退職が進む一方、若手志願者の減少が背景にある。教員の長時間労働が深刻化する中、教員不足は現場負担をさらに増大させかねない。
 必要な教員が確保できない学校では一部の授業ができなくなったり、進捗(しんちょく)が遅れたりする事例も起きている。高知県内でも本年度当初、小学校17校で必要な教員の配置数がいずれも1人少なくなり、習熟度別授業などへの影響が懸念される事態になったという。
 全国的に育休や産休を取得する教員も増えているが その欠員を一時的に補う非正規教員などの確保も難しくなってきている。
 70~80年代に大量採用された教員が退職期に入り、全国の各教育委員会も新規採用に力を入れてきている。高知県も年齢制限を緩和したり、県外で採用審査を実施したりして教員の確保に腐心しているが、全国の教員採用試験の受験者数は5年連続で減っている。
 教員志望者の減少要因の一つに挙げられるのが、学校現場の多忙化だ。文部科学省の2016年度調査では「過労死ライン」を上回る時間外勤務に追われる教員が、小学校で3割以上、中学校で6割近くに上った。授業時間などの増加や部活動の指導に加え、いじめや不登校、貧困問題など対応に苦慮する業務が増え、教員の過重労働につながっている。
 そうした教員の働き方改革が喫緊の課題になる一方、景気の改善傾向や人手不足で企業の社員確保や採用意欲が高まり、教員志望だった若手人材が民間に流れやすい環境が強まっている事情も重なる。専門家からは「教育界の努力は限界」との指摘が上がるほどだ。
 教員の不足は結局、教育環境の充実を妨げ、子どもたちの学習する権利を奪いかねない。日常の授業の遅れのほか、特別な学習支援が必要な発達障害などの児童生徒へのケアが行き届かなくなることも懸念される。要請が高まる少人数学級の実現も不透明にする。
 ベテラン教員の大量退職は「数」の面だけではなく、その指導技術を若手教員にどう継承していくかという課題も抱え込む。仮に、大量に新規採用できたとしても、人材育成が手薄になれば、教員の「質」の低下を招きかねない。
 教育は地域の未来を築く営みだ。その現場を担う有用な人材をどう持続的に確保していくか。給料や待遇といった、現実的な働きがいの要素についても本格的な改善の検討が必要になるだろう。教員の使命感や責任感に頼ってきた教育政策こそが、限界に来ているのではないか。
カテゴリー: 社説


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