2018.07.02 08:00

【イラン原油禁輸】米に国際協調の道求めよ

 イラン核合意から一方的に離脱を表明したトランプ米政権が各国に対し、11月までにイラン産原油の輸入をゼロにするよう要求した。日本政府は難しい対応を迫られている。
 トランプ政権は2015年の核合意で解除されたイランへの制裁を再開し、「最高レベル」の経済制裁を科すと表明していた。8月には貴金属取引や自動車部門を対象とし、旅客機の対イラン輸出許可も取り消すなど強力な制裁を再発動する方針を打ち出している。
 原油の禁輸要求にはイラン最大の収入源を狙い撃ちして、経済の一層の困窮を恐れるロウハニ政権に、より厳しい核合意などの譲歩を迫る狙いがあるようだ。
 トランプ米大統領の根強い支持基盤には、イランと対立するイスラエルを支持する米国最大の宗教団体などがある。11月には米連邦議会の中間選挙が控える。強硬な要求には選挙をにらんで成果を上げたいという思惑が透ける。
 しかし、核合意からの離脱自体が欧州などの反対を押し切った形で、国際社会の理解を得られていない。その上に、原油の「輸入ゼロ」を各国に迫る強硬姿勢はさらに国際社会の不信を高めるだけではないか。
 市場への影響も大きい。
 石油輸出国機構(OPEC)など主要産油国は6月下旬、協調減産を緩和し、増産することで合意した。上昇基調にある原油価格の抑制に乗り出したばかりだ。ところがイラン産原油を締め出せば、価格上昇に拍車が掛かる恐れがある。
 日本はイランに輸入量の約5%を依存している。原油の調達は通常は長期契約で、代わりの調達先を見つけるのは容易ではない。
 菅義偉官房長官は「日本企業に悪影響が及ばないよう関係国と協議したい」としている。
 米国の要求に応じれば日本経済に悪影響が及ぶ。応じなければ北朝鮮問題などで欠かせない米国との連携にひびが入る恐れもある。政府は板挟みの苦境に立たされている。
 日本はエネルギー源を安定的に確保する観点で、米欧とは一線を画すイラン外交を展開してきた経緯もある。安倍政権は今後、外交の独自性が問われよう。
 トランプ政権が力と内向きの論理を背景に、国際社会の理解を得ないまま打ち出す強硬策が続いている。
 3月には鉄鋼などの輸入制限という保護主義的な通商政策を発動した。6月には同盟関係にある欧州連合(EU)やカナダ、メキシコにも対象を広げた。EUなどは既に報復関税に踏み切り、世界の貿易摩擦が深刻化している。
 日本経済への打撃が避けられない自動車の輸入制限も検討している。政府はさすがに「米国経済、ひいては世界経済に破壊的影響を及ぼし得る」と警告を発した。
 イランに関しても米国の言いなりではなく、日本の立場を主張すべきだろう。欧州とも連携し、米国に国際協調の道筋を求めるべきだ。

カテゴリー: 社説


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