2018.07.01 08:00

【地上イージス】導入目的が揺らいでいる

 米朝に緊張緩和ムードが漂う中、果たして日本にこれほどのミサイル防衛設備が必要なのか。改めて冷静に議論したい。
 政府が2023年度の導入を目指す地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(地上イージス)についてだ。
 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の脅威に対抗するため、昨年12月に計2基の配備を閣議決定した。1基1千億円弱ともいわれる大型の装備品で、山口、秋田両県の陸上自衛隊演習場が候補地になっている。
 だが、導入の前提は大きく崩れようとしている。
 今年に入り、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が対外姿勢を軟化。先月にはトランプ米大統領との初の米朝首脳会談も行った。期限は設けていないものの「完全非核化」への取り組みを約束した。
 地上イージスの必要性に再検討が必要なことは明らかだ。しかし、安倍政権は「北朝鮮の脅威は変わっていない」と繰り返し、配備を急ぐ方針を示している。地質調査に向けた競争入札の公告や両県への説明も始めた。
 確かに北朝鮮への警戒を緩めることはできない。米朝の交渉が途中で決裂する恐れもある。それでも東アジアの安全保障環境はいま、歴史的転換点を迎えつつある。
 日本が非核化を後押しするどころか、頓挫を前提にしたような防衛強化を図るのは理屈が通らない。政府には国民が納得のいく説明が求められる。
 地上イージスは、米海軍や海上自衛隊のイージス艦に搭載されているのと同じ迎撃システムを地上に配備する。レーダーやミサイル発射装置などで構成され、航空自衛隊が保有する地対空誘導弾パトリオットより高い高度で迎撃できるという。
 気になるのは、政府が導入を決めたのは北朝鮮対応だけなのかという点だ。背景に米国側の「圧力」が見え隠れする。
 トランプ氏は安倍首相との会談のたびに防衛装備品の購入を促してきた。飯島勲内閣官房参与は「(トランプ氏に)押し付けられた」とテレビ番組で認めている。これでは導入そのものが目的化しかねない。
 政府は米朝の緊張緩和を踏まえ、北朝鮮のミサイル発射を想定した住民避難訓練を見合わせることを決めた。一方で、地上イージス配備を急ぐのは矛盾する。
 山口、秋田両県知事が小野寺防衛相に対し「納得できる説明をしてほしい」「地元感情を軽視している」と反発したのも当然だ。
 自衛隊の内部からは、地上イージスの「本当の対象は中国だ」との声も聞こえてくる。北朝鮮対応というのがさまざまな意味で「隠れみの」なのだとしたら、地元住民の不安は収まるまい。
 安倍政権は安全保障を巡って前のめりが過ぎる。説明を尽くさず、ごり押しするかのような強権姿勢が今回もにじんでいる。
カテゴリー: 社説


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