2018.06.29 08:00

【働き方法案】丁寧な再議論をすべきだ

 安倍政権が今国会の最重要課題と位置付ける働き方改革関連法案の審議が最終局面に入っている。参院厚生労働委員会で可決され、29日の参院本会議で成立する見通しだ。
 法案は5月末に与党が衆院の採決を強行した後、参院に送付された。しかし、野党からは安倍首相らの答弁に「同じ審議の繰り返しだ」という不満が出ており、参院の審議で議論が深まったようには見えない。
 最大の対立点は衆院での審議と同様、高度な能力が必要とされる年収1075万円以上の一部専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設だ。
 政府は「時間ではなく成果で評価する働き方」と意義を強調。本人の意向で適用を撤回できるという修正も加えた。
 これに対し、野党側の主張は「長時間労働や過労死を助長する」と平行線だ。自由な働き方とはいっても時間による規制を外せば、企業の都合や仕事の中身で長時間労働を強いられかねない。労働者の立場に立った制度とは言えまい。
 幅広い企業の立場に立った制度とも言いがたい。高プロを採用する方針の企業や、対象となる従業員数がごくわずかだという複数の報道機関の調査もある。
 高プロについては、政府が「働く人のニーズがある」との根拠にしたヒアリングの大半は法案提出目前に実施され、人数もわずかだったことが参院の審議中に判明した。
 これでは誰のためにつくる制度なのか、という疑問が拭えない。
 労働時間の短縮に有効として法案の柱と目された裁量労働制の適用業種拡大も、基になった厚生労働省の調査でずさんなデータ処理が発覚。政府は法案からの削除に追い込まれた。今回の法案は立法根拠が揺らいでいると言わざるを得ない。
 法案には、決して方向性は間違っていない中身もある。
 残業時間の罰則付き上限規制や、正社員と非正規労働者の不合理な格差を解消する同一労働同一賃金の導入はそれに当たるだろう。
 残業時間の上限規制は、労使合意があれば事実上の青天井で働かされる現状を改め、違反企業には罰則を科す。初めて強制力を伴う上限を定めることになる。
 ただし、繁忙期の上限とする月100時間未満は、過労死認定基準のラインだ。過労死ラインまで働かせることを容認しかねないという懸念は根強い。国会審議でも国民の不安は解消されてはいない。 
 第2次安倍政権は、安全保障法制や「共謀罪」法などでも重要な法案審議を打ち切り、採決を強行する手法を繰り返してきた。国民が十分に理解を深めるような国会論議が行われているとは思えない。
 働き方改革も人の命に関わる法案だ。もっと丁寧な再議論が必要ではないか。説得力のあるデータを用意し、疑問に一つ一つ答える責任は、常に情報を持つ権力の側にある。
カテゴリー: 社説


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