2018.06.28 08:00

【がんの見落とし】高度医療に死角はないか

 日本人の死亡原因の第1位であるがんは、医療の進歩で適切に治療すれば治る病気になりつつある。大切なのは早期の発見と治療だ。
 その根幹が揺らぐ重大なミスが続発している。
 横浜市立大病院は、コンピューター断層撮影装置(CT)検査を受けた男性が、がんの疑いがあると診断されたにもかかわらず、院内で情報が共有されず、約5年半後に死亡したと発表した。
 放射線科医が、検査画像から腎臓がんの可能性を報告書で指摘していたが、心臓疾患の患者だったこともあり、主治医はそれを確認していなかった。放射線科医も主治医に直接伝えていなかった。
 本来の治療部位とは異なる場所に異常が見つかったのだから、情報はなおのこと共有しなければならなかったはずだ。しかも、昨年秋、同大市民総合医療センターで同様の事案が発生し、他にないか調査していて判明したという。
 CT検査を巡るミスは他の医療機関でも起きている。今月、千葉大病院が患者9人の画像診断でがんの所見を見落とし、うち2人が死亡したと明らかにした。昨年も東京慈恵会医大病院と名古屋大病院がミスを公表している。
 いずれも見立ての問題ではなく、報告書の未確認や院内の連携不足などが原因だ。がんが早くに見つかっていながら、十分な治療を受けられずに亡くなった患者や遺族の無念さはいかばかりだろう。
 医療事故の情報を収集している日本医療機能評価機構も、画像診断報告書の確認ミスが急増していることに警鐘を鳴らしてきた。医療現場はもちろん、関係団体や国も深刻に受け止めてもらいたい。
 医療体制が充実した大病院によるミスが目立つことも気になる。
 大病院は高度な医療ができる分、専門に応じて担当医も細かく分かれていることが多い。自らの専門領域しか診ないような体制や意識になっていないだろうか。
 専門分化されているなら、なおさら情報共有するシステムが重要だ。ミスが判明した病院の中には、画像診断報告書の内容を患者と共有したり、報告書が未読の場合はパソコン画面に警告を出したりする防止策を進めているところがある。
 医師の長時間労働が問題になっている。十分に目配りできる人員や勤務体制になっているかどうかも重要な検証課題だ。
 判明した事例が「氷山の一角」ということはないだろうか。徹底した調査と、なぜここまで頻発するのか背景の究明が急がれる。
 CTなど医療装置の技術革新は目覚ましい。だが、いくら技術が進んでも、それを使って治療するのは医師ら人である。
 一連のミスは医療界に大きな問題提起をしているといってよい。より高度化し、専門化する医療に死角はないだろうか。医療の原点に立った再発防止策が求められる。
カテゴリー: 社説


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