2018.06.27 08:00

【米の人権理離脱】国際協調かき乱す身勝手

 自分たちの思惑通りにならないなら、国際協調の縁を切る。米国のトランプ政権がまた強硬な振る舞いに出た。
 国連加盟国の人権や自由の擁護に取り組む、国連人権理事会からの離脱を決めた。トランプ大統領が肩入れを強めるイスラエルへの「慢性的な偏見がある」と批判し、不満をむき出しにした。
 人権理は日本を含む47カ国で構成し、パレスチナ自治区ガザへの軍事攻撃を繰り返すイスラエルへの非難決議をたびたび採択してきた。米は昨年、その非難決議が北朝鮮やイラン、シリアへの同決議を合わせた数よりも多いと強調し、離脱を正当化する理由の根拠にした。
 米国は昨年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)からも脱退した。その理由もユネスコの姿勢が反イスラエルだからと主張した。
 「米国第一」主義を前面に押し出すトランプ米政権は昨年の発足以来、地球温暖化対策の「パリ協定」や、米国が主導した環太平洋連携協定(TPP)、さらにイラン核合意など国際協調の枠組みからの離脱を相次いで表明してきた。いずれも自国の利益を優先するためだ。
 親イスラエル政策もユダヤ系の国内支持者に配慮した内向きの政治的思惑を色濃くする。昨年12月にはエルサレムをイスラエルの首都と認定し、パレスチナとの対立を激化させた。それが人権理のイスラエル非難決議にもつながった。米国が自ら火種をまいたにもかかわらず、国連を非難する。身勝手と言うほかない。
 トランプ氏は過激な差別発言などを繰り返してきた。不法移民の排斥政策も強めている。人権に不寛容な世論が米国内に広がっているとすれば、極めて危うい。
 米国は国際社会の中で人権や自由の尊重、擁護を普遍的正義として高く掲げてきた。国際協調の場で存在感を発揮し、多国間の議論を深める役割を担うはずだ。
 人権理からの米国離脱により、中国などの人権侵害に対する監視が後退するのではないかとの懸念が各国から出ている。思想や言論を制限、監視する中国などが逆に国際社会での発言力や影響力を強めかねないという警戒だ。
 先進7カ国メンバーの英国やドイツなどが米国の離脱方針に失望や苦言を表明する一方、日本は具体的な賛否の政府見解を控えている。人権理で提起してきた北朝鮮による日本人拉致問題の解決を、トランプ氏に頼らざるを得ない事情を背景に抱えているからだ。
 だが、人権感覚が批判されるトランプ氏への追従や黙認は、国際社会から日本への不信や反発を招きかねない。人権理での日本の足場を弱めることにもなる。
 独裁国家や紛争地で人権侵害や民族迫害がやまず、子どもや女性への暴力も絶えない。安倍政権は米国との親密関係をうたうならばなおさら、関係国と連携し、トランプ政権に再考と冷静な行動を促すべきだ。
カテゴリー: 社説


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