2018.06.26 08:00

【トルコ大統領選】いまこそ批判に向き合え

 トルコ大統領選で現職のエルドアン大統領が再選された。国民の選択は尊重されるべきだが、トルコが国内の分断や周辺国との対立を深めないか心配だ。
 昨年の憲法改正に伴い、トルコは今回の選挙後に議院内閣制から大統領制に移行する。儀礼的な位置付けだった大統領が行政府の長になり、幅広い権限を持つ。
 エルドアン氏は2003年に首相に就任し、14年に大統領に転じて実権型大統領制導入を主導してきた。新制度でも大統領に決まり、名実共に実権を掌握することになる。
 問題は、このまま進めば「個人支配」に陥りかねないことだ。
 16年のクーデター未遂事件後、エルドアン氏は強権支配を加速させてきた。敵対するイスラム指導者ギュレン師を事件の首謀者と断定し、軍や警察、司法などのギュレン派を粛清した。
 国連によると、16万人を逮捕し、15万人余りの公務員を解雇したという。社会を混乱に陥れたクーデターの責任追及は必要だとしても、かなり乱暴に映る。
 ギュレン師の関与は明確に立証されていない上、教員や報道機関も粛清や弾圧の対象になった。事件を利用して批判勢力を排除しているとの見方が出て当然だ。
 事件後、大統領に権限を集中する改憲に踏み切ったとなれば、なおさらだ。実権型大統領制に移行するための今回の大統領選も、当初の計画より1年以上前倒しされた。
 しかも非常事態宣言が出されたままである。政権に批判的な団体が厳しく監視され、言論統制も続く中、国の根幹に関わる改憲の国民投票や大統領選が行われた。正常な民意の問い方なのか疑問が残る。
 強権化するトルコには周辺国なども警戒を強めている。
 欧州連合(EU)は、トルコの人権問題やシリアへの軍事介入を批判しており、トルコのEU加盟交渉も事実上凍結させている。
 トルコは国民のほとんどがイスラム教徒だが、政教分離を掲げてきた。安全保障では北大西洋条約機構(NATO)に加盟する。EUへの加盟も悲願だが、EUはトルコの法の支配や人権の尊重に懐疑的だ。エルドアン氏はこうしたEUに強く反発している。
 欧州とアジアの結節点にあるトルコは地政学上、極めて重要な国である。トルコ情勢が不安定になることは、欧州、アジア各国にとっても避けたいところだ。
 その意味では安定した政権の存在は大きいが、独裁や権力乱用を許すことになれば、将来、別の不安定要因を生みかねない。国際社会はトルコが暴走せぬよう、監視と対話を続けていく必要がある。
 エルドアン氏には、強力な権力を手にしたいまこそ、国内の反対勢力や国際社会の声に真摯(しんし)に向き合ってもらいたい。異なる意見に耳を傾けてこそ、真に期待される為政者であるはずだ。
カテゴリー: 社説


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