2018.06.24 08:20

【EU報復関税】摩擦の拡大に歯止めを

 欧州連合(EU)が、米国による鉄鋼とアルミニウムの輸入制限に対抗し、米国製品に高関税を課す報復措置を発動した。まず28億ユーロ(約3600億円)分の製品を対象としている。
 きっかけをつくったのは、貿易赤字削減のため、保護主義的な強硬策を繰り出すトランプ米政権だ。
 米国は3月に鉄鋼などの輸入制限に踏み切った。当初は中国が標的とみられたが、6月にはEUやカナダ、メキシコにも対象を広げた。
 中国は4月から米国の農産品などに報復関税を課している。同盟関係にあるEUが実際に報復に入ったのは、世界の通商摩擦が深刻の度を増したことを物語っている。
 対象品目には農産品のほか、ハーレーダビッドソンの二輪車やバーボンウイスキーなど米国を象徴する産品が含まれている。これらは与党共和党議員らの地元でつくられている。秋の中間選挙対策に走るトランプ政権の支持基盤を狙い撃ちし、揺さぶりをかける狙いだろう。
 ところがトランプ米大統領はEUの報復に反発し、欧州車に20%の関税を課すとツイッターで表明した。自動車はドイツなどの基幹産業であり、理不尽な高関税はのめないだろう。EUとの対立はより深刻化する恐れがある。
 トランプ氏は5月の段階で、自動車に高関税を課す検討を指示している。日本も標的になるのは避けられそうにない状況だ。発動すれば国内経済は大きな打撃を受ける。
 強硬策と適用除外をちらつかせ、譲歩を迫るのがトランプ流のようだ。日本はまずは世界貿易機関(WTO)への提訴手続きに入っているEUなど各国・地域と協調して、米国に再考を促す姿勢も必要だろう。
 トランプ政権は最大の貿易赤字国、中国との貿易摩擦も泥沼の様相を呈している。
 既に知的財産権侵害を理由に、年間約500億ドル(約5兆5千億円)に相当する中国製品に制裁関税を課す方針で、中国もすぐさま米国製品に同規模の関税を課すと発表している。第1弾の発動はともに7月6日に迫っている。
 トランプ氏の視線はあくまで米国内にしかないのだろう。中間選挙に向け、国内産業や雇用を守る実行力を訴える狙いだろうが、高い関税の応酬が狙い通りの結果を生むのか疑問だ。
 安い輸入品の制限は個人消費に冷や水を浴びせよう。製造業は調達コストに跳ね返る。米国への報復関税が広がれば、企業や生産者への打撃も小さくないはずだ。
 現に、共和党の実力者からも地域経済への影響を懸念する声が相次いでいるという。米商務省がここへきて発表した鉄鋼輸入制限の一部適用除外は、外国製品に頼らざるを得ない製品が対象にもなっている。
 報復の連鎖に歯止めがかかるよう冷静な対応を求める。トランプ氏の内向きの論理は修正されなければならない。
カテゴリー: 社説


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