2018.06.23 08:00

【大学無償化】議論が尽くされていない

 大学や専門学校といった高等教育の無償化に向け、政府が政策の大枠を決定した。「骨太の方針」に盛り込んだ。
 無償化の対象となるのは、夫婦と子ども2人の家庭の場合なら、年収380万円未満の低所得世帯だ。授業料や入学金を減免し、返済不要の給付型奨学金も支給する。
 日本の高等教育は先進国の中でも受益者負担の側面が強い。奨学金も有利子の貸与型が主流で、卒業後に返済に苦しむ若者が少なくない。
 学び続けようとする若者が、経済的理由でそれを断念したり、「借金地獄」のような生活に陥ったりする社会であってはなるまい。政府は関連法案を来年提出し、2020年度から導入する計画だ。支援を充実させる重要な一歩にしたい。
 とはいえ、制度設計や財源の確保などについて政府与党内でも議論が尽くされたとは言い難い。たとえば対象の年収はあまりに限定的ではないか。
 文部科学省によると、大学進学率は全体では50%を超えるが、政府案で支援対象に含まれない年収450万~600万円の世帯の進学率も約42%にとどまる。
 進学費用に悩む家庭は多い。国公立大でも入学金と授業料を合わせた年間負担金は80万円を超える。中所得層への支援も強化すべきだ。政権が無償化を「人づくり革命」の柱に位置付けるなら、なおさらだ。
 政府案では年収270万円未満の住民税非課税世帯は国公立大の授業料や入学金が全額免除になる。私立大に進む場合は加算し、短大や専門学校も大学に準じた扱いにする。給付型奨学金も金額は未定ながら同様だ。
 年収が300万円未満の世帯は非課税世帯の3分の2、380万円未満は3分の1をそれぞれ支援するよう、授業料の減額や奨学金を決める。
 日本学生支援機構の16年度調査によると、大学生(昼間部)の半数近くが奨学金を利用している。大半が貸与型とみられる。
 欧米では授業料が無料の国や、給付型奨学金が主流の国が多いことを考えても、無償化や支援の範囲を広げるべきだろう。
 調査では、国立大生の家庭の年収は約841万円で、私立大生の家庭より高いことが分かった。経済力がある家庭の子は学力が高い傾向が以前から指摘されている。東大生の家庭は年収が高いことで知られる。
 そうであるなら、私立に進学せざるを得なかった学生への支援も強化する必要がある。
 無償化は19年10月からの消費税増税分を活用し、幼児教育・保育の無償化と合わせて実施する。少子化が進む中、将来を担う世代を支援する意義は大きいが、消費税増税はそもそも国の借金を減らすことが目的だったはずだ。
 それを後回しにすれば、結局は借金が次世代につけ回される。安倍政権は消費税増税を2度延期した過去もある。未来を見据えた責任のある取り組みをしなければならない。
カテゴリー: 社説


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