2018.06.15 08:00

【カジノ法案】貸金は依存症招かないか

 競馬や競輪などの公営ギャンブルで、会場内で賭け金が借りられるとしたら、どうだろう。
 「ギャンブル依存症を助長しかねない」と、多くの批判や不安の声が出るに違いない。資金がなくてもギャンブルができるのだから。
 安倍政権は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案で、それをこともなげに導入する構えだ。法案でカジノ業者に「特定資金貸付業務」を認めており、会期末が近づいてきた国会の争点に急浮上してきた。
 カジノ解禁は以前から、依存症を招かないかが問われ続けてきた。貸金となればなおさらである。
 何より政府の説明も、国会での議論も不十分だ。このまま採決する流れになることは許されない。
 法案によると、貸し付けは、訪日外国人と一定額以上の預託金をカジノ業者に納めた日本人が対象になる。政府は預託金の基準を明らかにしていないが、約800万円以上のシンガポールなどを例として示し、「対象は『富裕層』に限定される」(石井国土交通相)とする。
 だが、富裕層だからといってギャンブルで身を滅ぼしたり、周囲の人を不幸に巻き込んだりしないわけではない。
 大手製紙会社の元会長が海外のカジノで巨額の借金を背負い、犯罪に手を染めた事件が記憶に新しい。元会長は返済のため、子会社から55億円以上借り入れて損害を与えたとして実刑判決を受けた。
 しかも法案では、貸付金は2カ月間は無利子だ。それを過ぎて支払いがなければ年14・6%の延滞金を課し、借金の回収は業者に任せることもできる。
 確かに海外では、貸し付けが受けられるカジノが多いが、日本のカジノ解禁では入場者の大半が日本人になるとの予測もある。海外と同様のシステムにするのは問題がある。
 法案は、日本人の入場は週3回、月10回まで、入場料は6千円といった制約を設けている。これも依存症対策としては「不十分だ」との指摘が少なくない。
 安倍政権はIR整備を成長戦略の一環に位置付けるが、そもそも、なぜカジノなのか国民の理解は深まっていない。世論調査を見ても、解禁には極めて慎重だ。
 今国会ではIR法案とは別にギャンブル依存症対策法案が提出され、先月下旬に衆院を通過した。医療提供や社会復帰支援などの施策を国や自治体に義務付ける。
 パチンコ依存症などは大きな社会問題になってきた。多重債務や自殺にまでつながりかねず、国や自治体の政策の強化が求められる。
 だが、その実績もないまま、新たにカジノを解禁する姿勢は疑問だ。IR法案を成立させるための法案だと批判されても仕方がない。
 安倍首相はIR法案を巡って「依存症などの課題に万全な対策を講じる」と強調したはずだ。現状は「万全」に程遠い。 
カテゴリー: 社説


ページトップへ