2018.06.10 08:00

【児童虐待】対応が追い付いていない

 大人による虐待で子どもの命や尊厳が脅かされる―。一刻も早く根絶しなければならないが、対応は追い付いていないようだ。
 児童相談所を設置する全国69自治体のうち32自治体が、どの事案を警察に情報提供するか具体的な基準を設けていないことが分かった。共同通信が調べた。
 子どもたちのSOSにいち早く気付き、手を打つには関係機関や地域の連携が欠かせない。特に児相と警察は協力して解決に当たるべきケースが多い。半数の自治体にその連携基準がないというのは衝撃だ。
 東京都目黒区で5歳の女の子が死亡した事件も、関係機関の連携が十分だったのか問われている。
 都の児相は、両親の虐待について転居前に住んでいた香川県から情報を引き継いでいたが、悲劇を防げなかった。父親は香川で娘への虐待や傷害容疑で2度書類送検(いずれも不起訴)されていたが、都の児相は警視庁と情報共有していなかった。悔やまれる。
 厚生労働省によると、全国の児相が2016年度に対応した児童虐待件数は12万件を突破し、過去最悪だった。暴力やわいせつ行為、食事を与えない育児放棄が後を絶たない。これが先進国・日本の現実だ。
 共同通信の調査では、児相が把握した全ての事案を警察に提供していると回答したのは高知、茨城、愛知の3県だった。
 本県は10年前、南国市で起きた小学生の虐待死事件を教訓に全件共有するようになった。高知市では、児相と警察だけでなく関係機関が月1回連絡会を開いて、情報を持ち寄っている。
 都も一定レベル以上の虐待は児相と警視庁が共有している。「身体的な虐待で一時保護され、家庭復帰した事案」「児相所長が必要と判断した事案」の二つが基準という。
 ところが、目黒区のケースはいずれの基準からも外れているとされ、情報は共有されなかった。香川県で書類送検までされているのに基準外とされたのは理解に苦しむ。
 なぜ事件を防げなかったのか、2都県の児相の対応は適切だったのか徹底した検証が求められる。
 警察との情報共有には慎重意見がないわけではない。警察に知れることを嫌い、親族が通告をためらう場合や、児相が両親との信頼関係を構築する際の障壁になる恐れもある。しかし、児相だけでは十分対応できないのは事実だ。
 児相の人員や予算の強化も急がれる。両親と信頼関係をつくるにしても、警察との連携システムを生かすにしても、個々の事例に児相職員の手が十分回らなければ、深刻な事例を見逃しかねない。
 今回の事件は転居した場合の問題も浮き彫りにした。関係機関や地域が一丸となって見守りをしていたとしても、転居してしまえばそれが絶たれる可能性が高い。
 子どもを守るために論議すべきことは多い。
カテゴリー: 社説


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